2002年07月23日(火) |
ベルンハルト・シュリンク『朗読者』 |
ファンタジックな装丁からは想像できない、骨太な、大人な物語。 うーん。 最近私が読んだ本の中で、明らかに異質な一冊。
いや、見た目はすごく「ふつー」なの。 厚さ的にも、活字のつまり具合も。 そんで、去年ぐらいのベストセラーにあったから、 油断していたよ。 軽く読めると思ってたんだけど。
いや、こむずかしい表現が使われているってわけじゃないんだよ。 むしろスパッと簡単に表現しきっちゃってる文体。 だから表現としてはなんてことはないんだけど、一つの表現の背景にすごく大きなものがある感じがして、「ザクザクよんでいこー」って気になれないの。
一行読んでは、本から目を上げて考えてしまう。
ジャンルとしては私小説? 15歳の時に恋した21歳年上の女性との恋愛物語? ナチスドイツに対する西ドイツの反動のルポタージュ? 法学的見地からみた戦争裁判…
とにかく、「もう一度読みたい」と思ったひさしぶりの作品です。 うん。この作品はもっと読み込む必要がある。
でも、この作品がしばらくベストセラーランキングに入っていたというのは感慨深い。 この本を面白いと思える人がそれだけいるというのは、嬉しいことです。 活字離れ、小難しいものを厭う風潮を愁う今日このごろですが、『朗読者』がベストセラーになるうちは、大丈夫!
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