| 2002年09月25日(水) |
村上春樹『ノルウェイの森(上)』再読 |
「なんだか、ああじゃないこうじゃないってもじゃもじゃしていて、もっとはっきりしたらいいのに。 主人公はなんかもったいぶってかっこつけた感じでいけ好かないし。読んでいて退屈だ…。」
以前この『ノルウェイの森』を読んだときには、読むことが苦痛ですらあった。全然面白くないけど、とにかくどんな本でも読み始めたら最後まで読み終えるのがポリシーだったから、何とかかんとか最後まで読んだ本。 あえて、再挑戦です。
表紙をめくって、タイトルページをめくって…あれ、全然退屈じゃないじゃん。 それどころか、いいのでは?随所にどきっとさせられながらぐいぐい読まされる。
「読書は経験の代用としては有害なものであるが、 経験を解釈し、拡張する上においては最も重要である」 デューイ『学校と社会』 ってことか☆ 大学に入って自分とは何かを探し求める主人公とミドリ、直子。葛藤したり、語り合ったり、求め合ったり、めちゃくちゃをしたり。 今、私自身がそういう時を越えてみて、この物語はむしろ懐かしさをもって胸に迫ってきます。
これ、初めて読んだ時、私は小学生か、いいとこ中学2年ぐらいだったから、そりゃあ、わかりっこないよねえ。
「何か事件が起きるでもなく、淡々とひたすら続くのね」 って、思って、ほんとに惰性で読み切ったんだけど、この作品がすごいところは、そんな風にいやいや読んだはずの私にしっかりと文章を刻み付けていたことです。 読んでいて、「あ、これ、覚えている。」 という、デジャブのような感覚を何度も覚えました。 たとえば、寮のルームメイトの突撃隊の話、レイコさんの過去、長沢さんが大きなナメクジを3匹飲んだという武勇伝。読む瞬間までは忘れているのに、読んだ瞬間に、 「ああ、この記憶は『ノルウェイの森』だったんだあ」 と気づく。
上巻を読んでみて、一番胸に染みた言葉。 幸せについて
「まるで荒れた冷たい海から引きあげられて毛布にくるまれて温かいベッドに横たえられているようなそんな気分ね」
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