| 2002年10月25日(金) |
吉本ばなな『体は全部知っている』 |
吉本ばななを最後に読んだのはいつだったんだろう? 『TUGUMI』が大好きで、味をしめて他にも何冊も読んだはずなのに、他の作品は記憶に残るほどでもなく、いつのまにかどうでもいい作家の一人になっていた。 でも、久しぶりに吉本ばななを読んで、やっぱり、いいなあ、と深く深く思いました。
これは、ショートショートと言ってもいいくらい、短い作品を集めた本です。 ほとんどが書き下ろしということもあって、肩の力が抜けている感じが伝わってきます。
どの作品もすごくさりげない。 私の日常のリズムを乱すことなく、静かな安らぎを与えてくれる。 「感動した!」とか 「おもしろかった!」 って感想とはかけ離れているんだけど、このさりげなさって、すごいことだと思う。 うーん、よく自分にも似た体験や、感情を持った覚えがあって、「共感する」なんて言うけれど、私はこの本を読んで、「共感してもらった」気がした。 静かに紡がれていく物語の中に描かれている人の心のちょっとした屈折、こだわり、苦しみ、なんかがちくりと胸をさすんだけど、その後にはちゃんとほっとするケアがある。 なんか、読んでいながら「受け入れられている」と言うような不思議な安らぎがある本だった。
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