| 2004年07月28日(水) |
村上春樹『国境の南、太陽の西』 |
ビンゴですよ!これこれ、 これぞ私の求める村上春樹ワールド。
春樹ランキング『スプートニクの恋人』に次ぐ第二位にランキングしました。いやあ、いいっすね。 久しぶりにむさぼるように読書をしてしまった。 目が疲れて、読むことを体が拒否しても読み続けるのをやめられなくって最後のページまで一気に読んでしまいました。
過去は取り戻せず、やり直せず、どうしようもなくそこに存在しているものである。 現実は目の前にあっても、時に空想の中の出来事よりも頼りなく不思議なものである。 というメッセージが全編から伝わってきました。
「僕は怖かったんだよ」と僕は言った。 「怖かった?」と島本さんは言った。「いったい何が怖かったの?私のことが怖かったの?」 「違うよ。君が怖かったわけじゃない。僕が怖かったのは拒否されることだったんだ。僕はまだ子供だった。君が僕を待ってくれているなんて僕にはうまく想像できなかったんだ。僕は君に拒否されることが本当に怖かった。君の家に遊びに行って、君に迷惑に思われるのがとても怖かった。だからつい足が遠のいてしまったんだ。そこで辛い思いをするくらいなら、本当に親密に君と一緒にいたときの記憶だけを抱えて生きていたほうがいいような気がしたんだ」 彼女はちょっとだけ首をかしげた。そして手のひらの上でカシュー・ナッツを転がした。 「なかなかうまくいかないものね」 「なかなかうまくいかない」と僕は言った。 「私たちはもっと長い間友だちでいることだってできたのにね。本当のことをいうと、私は中学校に上がっても、高校に上がっても、大学に行っても、友だちというものが一人もできなかったの。どこにいてもいつも一人だった。だから私はいつもそばにあなたがいてくれたらどんなにいいだろうって思っていたの。たとえそばにいてくれなくても、手紙をやりとりするだけでも良かったのよ。そうすればずいぶんいろんなことが変わっていたと思うわ。いろんなことがもっとずっと耐えやすくなっていたと思う」、島本さんは少し間をおいて黙っていた。
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