きよこの日記

2004年10月26日(火) ガルシア・マルケス『エレンディラ』

“大人のための残酷な童話集”です。大きな翼のある、ひどく年取った男(天使)のお話しや、行く先々で猛毒を飲んでは生還するなど奇跡を行って見せる行商人の話などが収められています。
まるで目の前にあるかのような描写と作者の思い描く空想の光景がまるで境界なく語られていく手法は『百年の孤独』と同じなのですが、短編だとその魅力が充分に生かされないなあ、というのが正直な感想です。
ただ、奇想天外な物語に終わってしまう感じがします。

、最後に収められている「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語」は中編ほどの長さがあり、繰り返す不幸と残酷な所業が歳月の重みとあいまって、不思議なマルケスワールドに誘ってくれました。

『百年の孤独』にしても、この作品集にしても、やっぱり、その面白さは、非日常の世界に遊ぶことができるということのような気がします。
それはマルケスの文体が、ありえない現象をまるで本当に起きたことと同じように扱う幻想的なものであるということがまず第一の理由だとおもうのですが、その作品世界がラテンアメリカという、まったく異なる文化の上にあるということも大きな理由なのではないかと思いました。

例えば、家のつくり一つにしても、“ローマ風呂めいた孔雀模様と稚拙なモザイクで飾られた浴室”と言うときに、私の頭の中で想像するものと、作者やラテンアメリカに暮らす人々の思うものではかなり違うのではないかと思います。そして、この差は、目に見えるものの描写よりも、感覚、考え方のほうが大きいでしょう。
私がこの作家の作品を読んでいて感じる非日常感は、私の日常がよりどころとするものと、作品の背景となるものとの差異なのではないかと思います。移動サーカスや曲芸師、行商人でにぎわう街。
大きな船の停泊する港。
文字のの間から埃と汗のにおいのする乾燥した空気を感じます。


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