■2003年01月29日(水)
  ― タイのおじさん4 ―
 (3 より続く)
 食事が終わると私は休む間もなく、各席につけられているモニターのリモコンをいじくりまわした。この行動は「さぁご飯も済んだし、これから私、映画でも観ようかしら」という、おじさんへの無言のアプローチだったのよ…。ホントは映画観るより寝たかったんだけど、眠りにつく前にきっとまたおじさんのおしゃべりが始まっちゃう、お相手をしていたらたぶん眠れなくなっちゃう…と考えた私がささやかに試みた「抵抗」のつもり。
 私が映画を見始めても、やはりおじさんは話しかけてきた!おじさん、もしかして寂しがりやさん? でも私が映画に夢中になっている(ふりしている)のを見て、おじさんも眠りにつくことにしたみたい。おじさんの寝顔を見た私も、ほっとして映画を中断して寝ることにした。
 機内のひどい乾燥状態のせいで、私は2時間ほど眠っただけで目が覚めちゃった。バンコクに着くまでまだ数時間ある…今度は本気で映画を観て時間を潰すことにした。しばらくするとおじさんも起き出した。でも今度は私に話しかけることはなく、代わりにもう片方の隣の男性に向かっておしゃべりを始めていた。う〜ん、おじさんはやはり「お話好きの寂しがりやさん」なのね。でも私はおしゃべりの矛先が男性に向かっていったことを、正直、安心してしまったよ。おじさんはいいヒトなのに、そう思ってしまう自分に罪悪感を感じながら…。
 時間が過ぎて行き、ふと、おじさんが私の肩をたたいた。またおしゃべりが始まるのかなぁ、映画観ているのに…。身構えている私におじさんがニコニコしながら見せたものは、映画鑑賞している私の横顔のスケッチだった。え?い、いつの間に描いてたの?!…なんだか少し寒いようなキモチが心をよぎっちゃった。
 「自分が英語を理解できない、話せない」ゆえに、おじさんのおしゃべりに十分にお相手できないことに、さっきまで罪悪感を持っていた私。でも少しづつキモチが変化してきた。本気でおじさんに対して困ったキモチになり、どういう態度をとってよいものやら疑問を感じた瞬間でもあった。

 (続きはまた後日!)




<<< PASTWILL >>>   HOMEPAGE "SAWA NET"
MY追加