灰色のゴムとプラスチックの合いの子のような電車の床
無数の人が踏みつけ、荷物を置き、汚物に雨に、時に雪に見(まみ)える灰色の床
その床につく数えられない大小様々なキズ
誰かがつけた生の証しでもある大小様々なキズ
キズをつけた人が自分だとは気づかないキズ達
彼らをつけた人々の何人の人が、自らの生を謳歌(おうか)しているのだろうか
彼らをつけた人々の何人の人が、すでに自らの生を閉じているのだろうか
顧みられないまま、次の世代へ受け継がれないまま、電車の床についたキズたちは産業廃棄物となっていく
この世に生を享けて、キズをつけたいと願った私の生と、彼らと何処が違うというのだろうか
執筆者:藤崎 道雪