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「 電車の疵(キズ) 」
2003年11月02日(日)


  灰色のゴムとプラスチックの合いの子のような電車の床
  無数の人が踏みつけ、荷物を置き、汚物に雨に、時に雪に見(まみ)える灰色の床
 
  その床につく数えられない大小様々なキズ
  誰かがつけた生の証しでもある大小様々なキズ
  
  キズをつけた人が自分だとは気づかないキズ達
  彼らをつけた人々の何人の人が、自らの生を謳歌(おうか)しているのだろうか   
  彼らをつけた人々の何人の人が、すでに自らの生を閉じているのだろうか

  顧みられないまま、次の世代へ受け継がれないまま、電車の床についたキズたちは産業廃棄物となっていく
  この世に生を享けて、キズをつけたいと願った私の生と、彼らと何処が違うというのだろうか

執筆者:藤崎 道雪 



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