嗚呼!!
ああ、止まれ! 止まれ!
走れメロスじゃないんだぞ!
両足よ 何でそんなに速くペダルをこぐんだ
肺よ 何でそんなに太腿に酸素を供給しようと大きく息を吸うんだ
闇夜だぞ!
曲がり角に、車の光が見えてるじゃないか!
ハンドルを取れ ブレーキを掛けろ
そうだ、そうだ、もっとだ!!
ああ、危ないギリギリじゃないか!!
人がいるぞ!
もっとゆっくり走れ ブレーキを踏め
口よ 何でそんなに大きな声で歌うんだ!
恥ずかしいじゃないか 無理なソプラノを出すんじゃない!
嗚呼!
心臓よ 恋に似た使命感だからってそんなにざわめくな
俺は生きて文章を書き残さなきゃいけないんだ
どうせ勝敗は決まっているメロスとは違うんだぞ
書き残して、書きのこしてやっとものになるんだ
足よ 手よ 口よ 胸よ 体全体よ
ああ もっとゆっくり行け 行ってくれ!!
ああ
嗚呼!!
執筆者:藤崎 道雪