ものかき部

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「 ウィグワム 」
2004年05月15日(土)



 出会い系メールのように送られてくる女たちの視線と好意、厚顔。
 TVドラマのタイアップ曲のように時期が過ぎれば、見向きもされない豚雌のようじゃないか。
 エミネムの「Stan」のように何枚もアルバムが出た後、初恋のように君だけを、
 君だけしか頭に浮かんでこない曲があるのだ。
 喉を締め付けられるような苦しみと貧困と絶望からくる狂気が、
 そして抑え過ぎた色香が、色褪(あせ)せることなく君を、冬の月にする。
 
 聴き込んだレコードの退色したtrebleと、無理して出す音割れたbassのグラデーションが、朧を君に掛けて。
 私が天球に届かなくても、私は闇夜に君に逢える。
 これから幾ら、幾許か、生を許されようとも、性に侵されようとも、太陽に地球に養われ依存しようとも。
 
 違う。
 違う違う。
 電話も手紙も肉体も、声も文字も肉欲も要らないんだ。
 そういう形あるものに、君を矮小(わいしょう)に閉じ込めたくないんだ。
 それは、出会い系メールと同じなんだ。
 君は、それは違うんだ。

 君だ、君だよ。
 君の心臓を握り潰(つぶ)す刹那(せつな)、血飛沫(ちしぶき)で目を細めあい見詰め合う、
 ズブリ という生暖かい手にかかる粘液、恍惚と見紛(みまが)う薄れ逝く意識と、その従順と全ての放棄と、
 食いしばる口腔で、睫毛(まつげ)から顎(あご)へ小刻みに震え、
 生存の宿命と智性から生じる罪悪感と解放、これらを渾然(こんぜん)と私に預けていく。
 ギリギリのキリの倣岸(ごうがん)が。
 君だよ、君だ。

 
追記;「ウィグワム」:アルゴンキン語で住居の意味。インディアンのテント風の小屋

執筆者:藤崎 道雪(校正H16.5.26)

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