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「 光りに順位を 」
2005年07月02日(土)



 額から自然と汗が吹き出して、汗の球のようにキラキラと太陽を反射した。
 サドルの下から上がってきた強い風が、キラキラに口付けをして吸い取っていく。
 強い風に連れられて視線を空へと広げていくと、ますます目が細くなった。

 ささやくように何百枚と揺れている鶸色(ひわいろ)。盛り上がって圧し掛かるような萌葱(もえぎ)が、反対の左側からは裏葉柳(うらはやなぎ)が更々と細長く踊っている。数本の幹や葉に見え隠れする枝のオーブグリーンがアクセントをつけながら、若竹色の向こうに全てに降り注ぐ煌(きらめ)きが天使のように笑い合いながら捉え所なく流れていく。
 瓶覗(かめのぞ)き色に変わったお堀の石の上には、濛々(もうもう)ビリジャンが溢れ出していた。

 この吹き抜ける風に、神を感じる。
 この吹き抜ける風に、神を信じる。
 この全ての世界を規定した、この1つ1つの事象に、と区別する前に神を信じる。

 決して鉄道の駅の出口に立った人々に導かれるのではなく、決して本来的に生じた汗が風を感じさせてくれたのを謀殺するのではなく。

 両瞼(りょうまぶた)を茶煉瓦(ちゃれんが)の歩道に戻しながら、神はもう、遥か後方に吹き抜けていってしまった。
 汗まみれの首をねじっても、言葉によって書きつけようと追いかけても、沈黙によってすらも。
 お堀の前の道路にあたって、ボロボロになったサドルを右にきっていった。




追記:原題は「神と順位」。RAMJAの「光り」に共鳴したので改題。
   題の「順位」は、順位付けから神が生じることを強調するため。字義主義の基礎となる→神秘主義の基礎となる→個人内にしか存在しない神秘体験がテーマ。その神秘体験に順位付けという合理性を持ち込むことで他人との共有という宗教、その中心である神が生じるので、「順位」を題名に。

執筆者:藤崎 道雪

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