秋の夕暮れの気持ち良い涼しさが汗を撫(な)でる
もう少しでつりそうな両脹脛(ふくらはぎ)
ホームの人々の静寂と遠くの、ブルルルゥーという車の囁(ささや)き
わずかながら湖面にポコリ、ポコリと泡を奏でる安心
根源的な悔しさや怒りは青びた湖面の下にぼかされて
合理的な慰めは湖面に漣を起こす風のように吹き抜けて
キラキラと夕日に染まる水面に倒れこむような肉体的な脱力感
微(かす)かに湖面から意識を遠ざけようとする意思
不意に残りて通り過ぎていく薄桃色の香水
まとまらなかった1つ1つの流動的な各々がコツコツと離れていく後姿へと向かう刹那(せつな)
抑えつけずとも湖面から噴水できない、どうしようもない咆哮(ほうこう)が全てを、自らまでも消し去った
執筆者:藤崎 道雪