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「 夜にとける踵(かかと) 」
2005年08月17日(水)




 秋の夕暮れの気持ち良い涼しさが汗を撫(な)でる
 もう少しでつりそうな両脹脛(ふくらはぎ)
 ホームの人々の静寂と遠くの、ブルルルゥーという車の囁(ささや)き
 わずかながら湖面にポコリ、ポコリと泡を奏でる安心
 根源的な悔しさや怒りは青びた湖面の下にぼかされて
 合理的な慰めは湖面に漣を起こす風のように吹き抜けて
 キラキラと夕日に染まる水面に倒れこむような肉体的な脱力感
 微(かす)かに湖面から意識を遠ざけようとする意思
 不意に残りて通り過ぎていく薄桃色の香水
 まとまらなかった1つ1つの流動的な各々がコツコツと離れていく後姿へと向かう刹那(せつな)
 抑えつけずとも湖面から噴水できない、どうしようもない咆哮(ほうこう)が全てを、自らまでも消し去った

執筆者:藤崎 道雪


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