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「 正銘ボール 」
2006年05月15日(月)




 僕の右手を、ぐいと内側にまげて、ちょっとしたテクニックで胸の内側へ入れてみる
 魂(たましい)という精神的な塊(かたまり)、というよりも命という肉体的な塊に近い手のひらサイズのボールを2,3個、コロンと胸の前の白い大きな机の上に投げ出してみた。おそるおそる取り出したのに、ボールの後を埋めるように血がドクン!ドクン!と鳴ってきた
 
 コロコロと、手の届く限界で止まったボールを、ぼーっと見てみた
何だろうこの塊は 何か意味があるんだろうか 何か良いものなんだろうか 何だか悪いものなんだろうか
 浮かんできた言葉たちに頭の中を占領されてしまったので、ぼーっと見てみた
 命の塊であることは確からしい
 お父さんやお母さん、死んじゃったおじいちゃんやおばあさんを見ていると、このボールが段々減っていって、しおしおのよぼよぼになっていったのが分かるから
 そのうち私も白髪(しらが)みたいにボールのパワーがなくなっちゃう現象が起こるんだろうな
 
 それにしてもこの塊、口から食べれるんだろうか?
 それにしてもこの塊、壊れて消えたりするのかな?
 それにしてもこの塊、大切な誰かに上げられないのかな?
 それにしてもこの塊、誰かのをもらえないのかな?

 おばあちゃんのようにボールの穴ぼこには、何か滓(おり)ような心理的な塊が入り込むのかな
 おじいちゃんのようにボールの穴ぼこは、何か自信のようなものを全て吸収してしまうブラックホールなのかな
 

執筆者:藤崎 道雪

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