観えているのは、思想的な国体であって、国際政治の力学であって、異性の根源的衝動であって、同性の現象的理由であって、分析と結合という学術であって。
見えているのは、五元素であり、7色であり、姿形であり、質量と物性であり、文字ですらある。
それらを全て吹き飛ばしていくのが彼の音楽だ。
欲求や衝動や強欲が、観えも見えも破壊しつくようにではなく、優しく包み込むように中性子の流砂の中に放り込んでくれるように。
原子の粒ごとに分散させられるような無感動や無感覚で、やっと吹き飛ばしてくれるのだ。
もう、唾液や精液や血液の粘度がなくなっていく喜び
もう、肌色や白髪や陰毛の色素がなくなっていく哀しみも五月雨のような流砂の中で、さらさらと。
執筆者:藤崎 道雪