ちょっとした口述と不満でついてくる女性は沢山いる。
「不満を感じない女なんていない。いてもたった半年さ」とホストの友達は言い切った。「30前後から女性ホルモンが盛んにでるんだよ」と医療関係の友達は言い切った。
だから、ちょこちょこっと口述を与えてあげれば喜んでついてくるし、「うんうん」と頷(うなず)いていれば、「聞いてもらってすっきりしました」とご機嫌にさせてもっていくのは簡単だ。最後はサプライズをスパイスに。
メインディッシュは「こんな風になるなんて」という陳腐な台詞と裏腹な黒いレースのついた下着
副菜は「私が不倫をするなんて」という聞きなれた台詞と裏腹な歓喜に爛々(らんらん)と輝く二重の大きな瞳
デザートは「どうしてこんなに、生まれてきて良かった」というTVドラマのような台詞と裏腹な30代のホルモンによる自己の崩壊
私だって10代後半の思春期は自己が崩壊したのかと思うほどだったんだ。そこから不安になって確実なものを掴(つか)みたいとサラリーマンになる者、不安定を肯定しようとして事業や免許を獲得しようとする者、不安に押しつぶされてニートになる者、世間や親の言いつけ、社会のルールを漫然(まんぜん)を絶対化する者、なるがままに任せて三流にってコンプレックスを抱き続ける者。
変化と自己の距離をやっと測らなければならなくなった女性性ゆえの悲劇があなたにもやってきただけなんだよ。それを男性の責任に転嫁するのも、離婚に転化するのも、職業で転職するのも、それもまた、女性性ゆえの依存の構造の中にどっぷりと嵌(はま)っているだけだから。
その牝としての性(さが)を食い殺そうとするのもまた、牡(おす)ゆえの性として狩に出かけるだけなんだ。君のそのカールした素敵な髪の毛の中に、紅色に喘(あえ)ぐ口紅と真っ赤な舌ベロを打ち壊し切るまで側にいても良いんだよ。
見上げれば湿気で現実感が揺れる深夜の高層ビルが建っていた。
飛行機に知らせる赤いライトがピカー・・・ピカー・・・と点滅していて、バスケットが終わった後の汗のカーテンの中で妄想していたのだと、スーーーっと飛行機が着陸するように気が付いたのだった。
あなたは個性的では全くないよね。個別性でしかないんだよね、その素敵な髪の毛も自らの悩みの原因に気が付かず、旦那様に転化しているのも、転職を希望しているのも、豊かになった社会だからこそ出産を恐れるようになったのも。
私も個性など全くないよ。
私が打ち出そうとしているものも、何時か誰かが言った事、言ってなかったとしても何時か誰かが代わりに言ってくれる事、ただそれだけの事。
私でなければない理由なんて1つもないんだから。
私はただ目の前にたまたまぶら下げられた人参を欲しがっている馬車馬(ばしゃうま)でしかないんだ。
汗をふき取ってもふき取っても流れてくる、それすらもコントロール出来ないでいる
追記:「老いきウエルテルの悩みのような」の続きです。