さっき自分の肛門の中の糞を確かめたように ショーウィンドーの中の流行をチェックする
闇夜に入った街中を流せば高級な黒いコート 濃茶の革靴 酒臭い息 はじける3人の笑顔 人恋しくなるコーヒーショップの電燈 足元の濡れたタバコの吸殻
さっき自分の口腔から吐き出した胃液のように 皮肉的マイナス思考を便所に流して社会システムに身を任せればいいじゃないか
恥ずかしがらずに人前で糞をひねり出しちまえよ
恥ずかしがらずに高い服を買えよ、日本では無用のスポーツカーを たまげるくらいの異性を、数億で誰もが驚く家屋を手に入れろよ そのために働くという社会システムに身を投げ出しちまえよ
ほら、こんなに
ほら こんなに
いるじゃないか そういう奴らが 酒臭い赤ら顔 タバコを遠慮がちにすっている手つき 2万も20万もするコートを着ている中年4人組みと街頭ですれ違うだろう
スタイリッシュな自転車を乗りこなすナチュラル系も そういう奴らのように皮肉的マイナス思考を捨てさって心を開いてしまえよ
世界がこれまでになくお前に優しくなるぞ
もう後戻りできない年になっているじゃないか
もう先がない年になってきているんじゃないか
お前は特別じゃない
お前は何1つ特別じゃない
何一つ特別なことをしてきていない
何一つ特別なことをしようとしていない
何人からも特別だ と言われてきていない
何人からも特別だ と期待されてさえいない
他の生命を食べて糞を肛門の内側で生産して 呼吸をしないと5分で死に 栄養を取らなくても死に 周りに他人がいないと気が狂う
何一つ特別なことのない お前よ
よく目を見開いてみろ
その目の前の笑顔が 明るい街頭が 天空の暗さにはっとする それがお前の目の前にあるだろう!
買え! 触れ! 笑え!
無理やりにでも!
メスが毎日髪型を整えて 化粧品を自分で買い 素敵な服を選ぶために雑誌を読み、上から下までバッチリ
そうやって誘っているじゃないか 朝から晩まで恋愛にあこがれて 高価な宝石を着けるのは老いを誤魔化すためというのを知らないお前じゃないだろう
もうお前には判っているはずだ
他の生命を奪うのを見えないように隠されたのことを 隠していくことで我々が搾取者になったのを 日本でただ息をするだけで途上国の人々を虐げていることを
もうお前には判っているはずだ
自分の苦しみしか世界ではない 社会システムや周りの人々に感謝できない精神病者でもないはずだ 心療内科の薬も睡眠薬も 株を当てる操作的快楽も 射幸心と嘯(うそぶ)かれたパチンコも競輪競馬も 自我をただ横にずらすだけのアルコールも アルコールが飲めない人々のコーラも 合法的麻薬物質が入っているハンバーガーも 白砂糖の塊がごろごろ入った菓子類も 中毒性のある麻薬も現代のタバコも
全てお前には必要ないじゃないか
それなのに何故お前は
お前は社会システムと距離をとるのか 皮肉的マイナス思考と呼んだのが勘に触ったのならば訂正してもよいのだ
盆正月を祝う伝統的意義も日本人の死人への優しさも知っているじゃないか
右翼でも左翼でも己はこんなにも社会システムに役に立っている こんなにも存在価値がある どうしてこんなに社会はよくならないのか と意気込んで主張しないのか
高度な共同幻想がお前を成り立たせているのも知っているだろう
荘子の言う「道具に頼る心」から共同幻想とこの社会システムが始まっていて自然科学や技術 さらには軍事に無知なアホインテリでさえないじゃないか
右翼でも左翼でも携帯が出れば 街に自動販売機が出てくれば根本を考えずに買い利用する そういうアホインテリではないじゃないか
お前はその出発点を探り当てたじゃないか
さっき触った糞をひねり出した後 我々から見えなくなる社会システムを使ったじゃないか
根本を探りあてじゃないか お前は判っているじゃないか
それでもお前は
それでもお前は
進まないのだな
心を開かない というのだな
今食べきったうどん大盛
いや もう何もいうまい
いっそのこと
一般ピープル 精神病 アホインテリに流されしまえば楽なのにな
いや もう何もいうまい
今だけは
また 食え 寝ろ 糞をひねり出せ 呼吸をしろ
その時に何度も思い出せ
肛門の中の糞を
追記:原題は「 肛門の中の糞 」です