薄暗い豚肉の素揚げに舌鼓を打つ と
薄暗く陰影に隠してきた心を打つ言葉が
「神様か 仏様かと思いましたよ」
ドキッとして中華街に和風のアレンジを忘れてしまうほどだった
「2回目に天然なんだな・・・と分かって、もっと怖くなりました」
「そして哀れになりました」
若いうちからリストカットという生に取り付かれ、つい先日末期がんという死に取り付かれた彼のこぼした言葉だった
まれに、そう、まれに隠し持っている世界を見抜く人々がいる
豚肉の素揚げは美味しくて満足の色を感じたけれど、色彩をさらに深めてひざ小僧から胸元へと視線を上げる
「ナウシカのユパさまのような、人間臭さを感じさせない 自己犠牲で最後に命を投げ出すのに決して定住しない、安住しない」
「ネットや日記で垂れ流される感情や判断や欲望の人間臭さがないのは、分かったのですが、それでいいんですか。私はこうして話が出来るからいいんですけれど・・・」
スッとコンマ、0.1秒目を閉じて、彼の視線に黙視線を合わせる
ゆっくりと1秒を掛けて胸元へと、彼の視線の下へと合わせていく
波動の出ぬ音声を肺胞から出そうとするのは、決して同じ声が出せないから
重力質量と慣性質量がずれている、そのハザマから聞こえてくる波動を出せないから
もうすっかり功利的に処理するのも、もうすっかり性善的に把握するのも、墨子的発想で行動するのも、理解したけれど、それでもまだまだ私の肉体は、等価原理が及ばないらしい
「やっぱり分かっていたんだね」
彼のつぶらな瞳に初めて視線を合わせようとした