久しぶりにバリカンを手に取った
洗面台の上に黒い雪のように降り落ちて 積る
集めてみたらお鍋いっぱいになりそう
なにやら黒いこんにゃくみたい 所々白い斑点もある
鏡を覗き込んでみたら耳の後ろは 大分真白そう
どうにも やれやれ とバリカンの小さなスイッチを切る
目を閉じても閉じなくても昨日の会話が浮かぶ
短くしたら白髪が目立つと思いますよ
どう答えようか そうした思考の自由を手に入れて
どう染めようか そうした選択の自由を手に入れて
うらやましがられていた黒ゴマはゴマ塩になった
うらやましがっていた若い生肉は料理されて御馳走になってきた
ぷんぷん 美味しい匂いが洗面所に漂っている
ぷんぷん うれしい感動が私の周りに漂うようになった
これからも時々、バリカンを手に取ろう
これからも時々、私の肉体を美味しくしよう