僕は禿げる。(中略)それでも歌を聴いてくれますか?
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| 2002年09月28日(土) |
太巻きと「ちくわぶ」日記(仮) |
熊本では太巻きというものを見たことがない。太巻きが巻き寿司とどう違うのかも知らない。島津さんが節分か何かの日に後輩(まきすけ君?)と2人で厳粛に太巻きを東向きで食べた話しを聞き、「初物だろ?」と思った。少なくとも九州の一部では初物を「食べたら」東を向いて「笑う」のだ。東を向いて「食べる」のではなく。 何か共通の由来を持っている儀式のようだが、初物と太巻きはかけ離れているし、東を向いて笑うのと東を向いて食べるのとはかなり違う。太巻きを笑いながら食べるのは命がけかもしれないし、食卓を囲んだ状態で初物を東向きで食べつづけるのはあまり行儀が良くないだろう。
熊本と東京ではおでんの具も違う。熊本のおでんには「スジ」というと馬のスジを入れるようだ。ちくわぶなんて存在しない。昔僕は「ちくわぶ」が直接の引き金になった喧嘩で女性と別れた事がある。
その頃、僕と彼女はあまり意志の疎通が上手くいってるとはいえない状態だった。その夜は珍しく和気あいあいと話しをし、おでんの具の中で何が好きかという話しになった。僕は「薩摩揚げもいいなあ」と言った。彼女は「ちくわぶが好き」と言った。 無知である事はなんと人を尊大にするのだろう。僕は彼女の言う「ちくわぶ」は「ちくわ」の方言だと決め付けた。僕は「ちくわぶだ」と言い張る彼女に「ちくわだろう。絵を描いてみろ」と言った。 彼女が書いた絵はやはりちくわの姿をしていた。僕は「ちくわと言うんだこれは」と言った。彼女は「ちくわは私だって知ってるもん」と泣き出し、部屋を出て行った。 結局2人はそれから数ヶ月かけて何度かよりを戻しそうになりながら別れていった。最後は待ち合わせ場所に彼女が現れず、僕が七時間以上待つという悲しい別れをしたが、きっと僕が悪かったのだから仕方ない。 数年後、コンビニでバイトをはじめた僕はその初日、お客さんに頼まれたおでんの具を器に入れながらそれに遭遇した。それは彼女の描いた絵のとおりの形をしていた。僕はすぐにその彼女の事を思い出し、急いで具材の価格と写真の載っている表を見た。 「ちくわぶ」
僕は今もちくわぶを食べた事がない。僕はそれによって彼女を悲しませた。僕にはまだその権利がないのだ。
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