Dance日記帳
モクジキノウヨクジツ


2005年07月26日(火) オレオレ危機一髪

それは午前11時すぎ。
突然母が私の部屋にやってきて「おかしいのよ!変なの!」と言う。
何がおかしいのか。
どうも年寄は主語だとかが抜けたうえに、代名詞ばかりで、話の筋がつかめない。
しかも、動揺していたりすると尚更、意味不明だ。

よく聞くと、どうも自宅に警察から電話がかかってきて、父が出たらしく、内容は弟が電車で痴漢行為をはたらきつかまっているとのことらしい。

「なーんだ、オレオレ詐欺じゃない」

即座に弟の携帯に電話を入れてみる。
数回のコールのあとに弟が出る。
「どうしたの?」
いつもと一緒。
「今、どこ?どこにいるの?」
「へ?会社だよ?何?」
「あそう。じゃ、いいよ。警察とかじゃないよね?」
「はあ?警察?何それ?」
「後でまた電話するわ。じゃっ!」

母に、弟が電話にでて普通に会社にいて、普通に仕事していると伝えると、今にも泣き出さんばかりの表情。

電話でやりとりしている父にメモで「オレオレ詐欺。弟は会社にいる。連絡ついた。その相手の連絡先や口座番号を聞き出してメモってください。警察に連絡します。」と知らせる。
オロオロしていた父が、そのメモを見て、泣きそうな顔になった。

年老いた親というものは脆いものだ。僅かな嘘でも、わが子のことになれば真実を見抜けなくなるのだろうか。

「そんなこと、たとえ冤罪だろうとウチの弟がやるわけないじゃない!信じないでよ。弟に悪いでしょう〜」という私に、父が状況説明をする。

その手口は実に巧妙。
最初は「これは詐欺だろう」と思っていた父も、電話口に弟そっくりの声色の人が出て、狼狽えた様子で「どうしよう、、、、、」と言っているのを耳にしてしまったら、頭の中が真っ白になって信じてしまったらしい。
事情聴取で得た情報という弟の会社のことや、家族構成、あれやこれや、全てが「これは本当で、詐欺じゃないんですよ!」という裏付けに聞こえるようだ。
しかも、電話を切ろうとしても、こっちから質問しようとしても、上手に立ち回るらしく、こちらの思い通りにはならなかったとのこと。

私がいなかったら、間違いなく銀行に示談金を払いにダッシュしていたと父は言う。

ちなみに、ウチの両親は、わりと猜疑心たっぷりの人たちだ。
そう安々と詐欺に合うタイプとは思えない。セールスにも厳しい対応をするような人たちなのだ。
それに、なんたって狡猾な娘がいつだって、いろいろ嘘言ったりして、お小遣いを長年せびり取っているわけだから。
(よくやったなぁ、泣き顔で「お財布落としちゃったの」っていう奴。大学生の頃には通用しなくなっていたが。最大の嘘はNYに家出した時に「留学を許してくれなきゃビザ切れしてもパスポート捨ててこっちに居ます。違法滞在します!」というやつだったな。それにしても最悪の娘だ。)
以前、こういう詐欺の話をテレビで特集していた時に話し合ったことがあったが、まずひっかかるわけはないと高を括っていた。

母は、まだ半信半偽の様子。
もう一度弟に電話をする。
「もしもし?」
「なに?お姉ちゃん。どうしたわけ?」
「いやー。キミ、痴漢で新宿駅の鉄道警察詰め所にいることになっているよ。思い当たる?」
「はああ?何ふざけてんの?」
「オレオレ詐欺よ。父母ともにモロひっかかるところだった!」
「はああああ?何それ?」
「ま、母上、結構動揺しているようだから、ちょっと話してやって。」
母は、弟の声を携帯で聞いて、安心したようで、その場でしゃがみ込んでしまった。

皆さんも「ウチは大丈夫!」など思わず、今から家族でいざという時の暗号を決めたり、ルールを設定するほうがいいでしょう。

詐欺未遂とは言え、精神的なダメージは年老いた両親には結構堪えたようだ。可哀想に、憔悴しきった顔をしていた。
詐欺のターゲットになったということ自体が、かなりショックだったのだろう。


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