Dance日記帳
モクジ|キノウ|ヨクジツ
生まれて初めての裁判所。傍聴席。被告としての立場。自分の代理人弁護士と証人。
誰が、如何して、自分が此のような渦の中に突き落とされることを予想できるのだろうか。
神様は、その人が乗り越えることができる苦難をお与えになると云う。
ハタシテ、私は、其所までに強靭な人間なのだろうか。
自分ほど、脆く、あやふやで、根拠のない人間などないと思う。神の買い被りだと思う。「強くありたい」と思うことが、このような苦難を投げかけてくる元凶なのだろうか。疑問ばかりだ。
ひとつ。オトナになった、そんな不可思議な、感覚に襲われる。
誰もが味わうことではない経験。多分、私の今後の人生においても、二度とないのではないかと思う、貴重な経験。全てが初めてで、全てが不明解で。 しかし、何処か、遠いところで、自分がこの境遇を醒めて視ている。然も、興味津々な視線で。
ブラウン管の中の、退屈なドラマのシーン其のもの。何度となく見た、いろんなドラマの在り来たりの情景。古い、安っぽい刑事ドラマのワンシーン。 傍聴席にいる私はカメラなのだろうか。実感が湧かない。
傍聴席の硬い椅子に背筋を伸ばし、このひとつひとつの出来事を漏らさず全て自分自身に記憶しようと意識を集中させる。
何度となく、沸き上る感情の波に流されそうになりながらも、頭の片隅では「何があっても明日は來るのだ」とテロップが流れ、知らず強く握った手の中に爪が深く食い込む感触を覚える。
次に自分の尋問の番が来た時に、冷静さを失わぬよう、今から心を鍛えるしかないのだろう。
法廷は、嘘吐きの居所だ。
法律は弱きにとどめを刺す凶器。 信じるべきは、唯、自分ひとり。
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