Dance日記帳
モクジキノウヨクジツ


2006年05月18日(木) 偶然は必然

Dance Space Wingの舞台を鑑賞しに下北へ。

そもそもWingの公演だというのに下北の劇場とは。それだけで、十分無理があるなと思いつつ。万が一、運良くチケットが入手できればと智恵に頼んでおいた。
散々の苦労を重ねたうえ、昨日の夜には「ごめんなさい。やっぱりキャンセル待ちでしかチケット取れそうにないです。」というメールが届く。
彼女のことだから四方八方手を尽くしてチケット手配をしてくれたのだろう。メルパルクホールであってもチケット不足、整理券での入場というのが普通だから、それこそ下北のタウンホールじゃ到底無理。納得の了解だ。
「一生懸命チケットさがしてくれて有難う。残念だけど、また今度誘ってね!」と返信して引き下がる。

斯くして、昨日の日記通り、今日の予定は本格的衣替え、そしてジムでのマシントレーニング&ゲルマニウムで体調を整えるつもりだった。

納戸に引き蘢っていたわけで、たまたま部屋に戻った時に着信があったのに気付いて、留守電を聞く。どうやらチケットのキャンセルが出たらしい。慌ててコールバック。「ごめん、結局午後3時にじゃんけんで争奪戦して駄目だった!」まあ、そう運良く物事が運ぶわけはない。

その電話をきっかけに、トレーニングウェアに着替え、ジムに向かう。途中のコンビニでウ゛ァームをチャージ。するとバッグの中の携帯がまた着信を知らせている。

今度こそ本当にチケットにキャンセルが出たとのこと。今からならダッシュすりゃどうにか開演に間に合う(因に、開演1時間半前!)そのまま踵を返して自宅へ行き、速攻着替えて車に飛び乗り下北へ。
山手通りを飛ばし、ギリギリに現地着。

ここからはネタバレになるので、明日見に行く人は読まないほうが良いかもしれません。

先ずは、奇遇というより、偶然の必然とでも云うのだろうか。

私は今回の公演で何を期待していたかと云うと、原田薫の作品。
兎に角好きなのだ。ダンサーとしての彼女も、彼女の作品も両方。

受付で手渡されたプログラムに目を通すと、彼女の作品は「秘密」と「落日」とある。
どちらかならば、大して驚くこともなく「ふーん。随分地味なタイトル。」で終わったのだろうが、二つのタイトルを見て心臓がキュッとなる。
この両方とも、私の愛する『東京事変』の曲のタイトルだからだ。
「まさかね・・・」とは思い乍らも、隣に座る智恵に「これ、両方とも『事変』の曲名だよ。まさかとは思うけどさ。」と呟いてみる。

客電が落ちる。

鳴り出したイントロで叫びそうになる。正に、『東京事変』の「秘密」だ。こんな偶然があって良いのだろうか。
いや、矢張り、偶然ではなくて、此れこそ必然なのかもしれない。

ラストナンバーは「落日」。
此れについては、私のブログを前々よりご覧になっている皆様にはお判りの通り。
この曲については、大変な思い入れがある。
「落日」はアルバムに収録されている作品ではない。
シングルのカップリングで、本当に、本当に『東京事変』が好きだったりしなければ深く聞き込むことは滅多にないと思う。
ピアノの切ないイントロで始まる美しい曲で、シングルが発売になった直後に相当ハマり、一日中聴いていたほど(今も毎日一度は耳にしている)の作品だ。
過去にブログでも取り上げている(ブログのタイトルにまでしている!)。

舞台で照明が点く前に、「サビはどう踊るのだろう?」「ブリッジのところは?」「アウトローはどうなる?」と、あれこれ考えてしまう。

暗転の中に、「落日」の綺麗なイントロが流れる。
白い衣装のダンサーが流れるように踊り出す。
もう、猾いとしか言い様が無いのだ。猾い。私も踊りたい。否。踊るより、ずっと観ていたいのかもしれない。

この私の驚きと喜びと興奮やら感動をどう文字にして伝えたら適切なのか解らない。

溺愛する楽曲を何よりも素晴しいと思っている振付け師によって作品化されているのだ。
此れ程までの贅沢はあるのだろうか。

そして、何処かで、薫ちゃんも『事変』が好きだったんだ、、、と思うと、何だか其れだけでも嬉しく思えてならないのだ。
私が好むものを、好きな人も好む。それは偶然であり、そして、矢張り何処か必然だ。大きく括れば「テイスト」なのだろう。方向性が似ていることは当然でもあるだろう。

最後の最後まで、ドタバタしながらもチケット争奪戦を繰り返してくれた智恵に心から感謝。
本当にありがとう。

*追記*
時代はモダン&コンテンポラリー。全12曲ほどあり、前曲裸足。
バレエテクニック必須のムーブメントが多く、半端な身体能力では誤魔化せない作品がならぶ。
出演ダンサーは発展途上の子が多く見受けられる。それがまた、今後の日本のダンス社会を強いものにしていってくれるような予感を与えてくれる。
Artの色濃くなることは決して悪いことではないと思うし、ダンスが好きな人であれば十分楽しめるのだろうが、ダンスを知らぬものにとって、尚更の敷居の高さとなるのならば不安。ダンスは高尚なものばかりではないと思うから。観客に媚びぬ作品作りは、ある意味純粋なのだろう。
会場はどう見てもダンス関係者ばかりだったので余計なことだが。


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