また帰って来たロンドン日記
(めいぐわんしー台湾日記)

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2003年10月20日(月) 対話

昨日の夜、マーティンと友達ふたりでクラブに行った。
正確には、クラブの前までいった。
もう、何回もいったことのあるクラブ。
かなり大きなクラブだ。今日はLiberty Xが来る。
マーティンはすでに、今日のイベントの前売券を買っていた。


結果は。なぜか入れてもらえなかった。


俺「ここには何度も来たことがあるし、、、どうしてだめなんですか?」
係「今日はだめだ」
俺「『だめ』じゃ、分からないでしょう? 理由を説明して下さい」
係「早くここから出ろ」


マーティンは一度、中に入らせてもらえた。
俺達三人は、外に出されてしまった。

少し混乱。

携帯をかけてマーティンに中から出てきてもらう。
係員に「彼らはの僕の友達だ」といってくれる。

この時点では、俺は入れてもらえるだろうと思っていた。
しかし、係員が「だめだ」を繰り返し、
マーティンが「どうしてだ?」と叫ぶにいたって、
彼までもが外に出されてしまった。


係員にしつこく説明を要求した。

俺「何が理由で入れないと言ってるのですか?」
係「理由はない」
俺「理由がないではわからない。どうか説明をして下さい」
係「説明はない。なぜなら説明する必要がないから」
俺「なんということだ、、、」
係「『なんということだ』? だからなによ?」


係員は『毅然』とした態度で、揺るぎがない。
内部でどういう指示が出されているのか不明だが、
客に対する極度の非礼でありながらも、自信満々な態度を貫く彼女からは、上から何らかの「指示」が出されていることが見て取れる。


「気分が良くないので帰ろう」ということになる。


マーティンは追いだされた時に、
前売り券の払い戻しさえ拒否されてしまう。
「払い戻ししてほしければ、明日戻ってこい」と言われる。

翌日戻ってきても払い戻さない確率が高いので、
彼の買った前売りを他の〈中にいれてもらえそうな〉やつに売り、
その場を去ることに。

何人かのやつらと路上ですれ違い言葉を交わす。

「彼らは人種差別主義者だ! もう一度一緒にトライしに行こう!」
という陽気なラテン系。
「そう言うのが彼らのやり方だ。入りたいならそれに従うしかない」
我々の入場の仕方に難があると言う香港人。


昔は良く考えた。

彼らの行為が、何らかの特定の悪意、偏見、もしくは憎悪といった
類いのものに裏打ちされているのか、それともそうではないのか。



今の俺には、もうほとんど興味がない。



どうでもいい



そんなことは、もう分かったうえでこの国に『学び』に来ているんだ。


マーティンは、よく叫んでくれた。頼もしかった。うれしかった。
それでいいんじゃないのか?


「現象」が目の前で展開されているに過ぎない。
それにどういう意味があるのか判断しない。

その時の俺には、なにも感覚がなかった。何も感じない。
それどころかすっきりした気分さえしている。

その時、俺はどんな顔をしていただろう?
どんな顔をして係員とはなしていただろう?



マーティン、あの時の俺の顔はまともだったかな?




本当は、今日はこんな話を書くつもりじゃなかった。
浦沢直樹の「モンスター」を読み直している。
「彼氏・彼女の事情」もそうだがーーー
それがどんなものであったにせよ、原因が分かっていようといまいと、
トラウマから回復しようとしている人間にとって、
こういったものはどういう読み方になるのか。
そういう話を書くつもりだった。


授業で習っている、中国語の現代前衛小説の内容は、
確かに「精神病的」内容だが、俺的には、全く「普通」の内容だと思う。
俺には良く理解できる。ただ、今は理解したくないだけだ。
そしてそういうことは、やすやすと言わなくなっただけのことだ。
表現方法を変えたいんだ。飽きたから。


それは自分にとって大事なことだからだろう。


自分の感情を理解し、必要があれば表現し、
感情的に何かが強烈に流れ出してきていると、自分で気付いたとき
その感情を受け入れてやり、
「コントロール」出来るようになるということーーー


それは、自分の身を守ることであったり、
無用なトラブルに巻き込まれないための知恵であったり、
自分がみじめにならないため、
さらには、それによってまわりを巻き込まないため、
悪循環を起こさないため、自分が成長するため、、、。


それはそれだ。
そういうふうに成長できている自分が好きだし、
言いわけもほとんど言わなくなった。
「自分が、無前提に、この世に存在してもいいのだ」
と、本当に思っている。
余裕が出来た。追いかけらることもない。
先制攻撃して、いつも何かを守ることに汲々とする必要もなくなった。

それはすごく大きな変化だ。
自分をめぐる世界が変わっていく。
何が変わった?
自分が変わった。


うちの家のそばの保育所に、話をしないで
いつも「うーー」と大声で叫ぶばかりの男の子がいる。
フラットメイトによると「昔は話をしていた」らしい。
彼に何があったのかは知らない。
勝手に判断する気もない。
ただ、気になる。


今回ロンドンに帰って来てから、
むかつく回数は以前に比べて格段に減った。
かわりに「ものすごく残念な気持ち」になることが多い。


倉田三平 |MAILHomePage

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