また帰って来たロンドン日記
(めいぐわんしー台湾日記)
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2004年02月01日(日) |
「人肉饅頭」?? 水滸伝、実は強烈!! |
また本の紹介で書くと思うが、高島俊男著「水滸伝の世界」を読んでいる。これは学校で水滸伝の授業をとっているせいで興味をもって読んでいるのだが、実は水滸伝という小説、思っていた以上にめちゃくちゃな話だ。
もちろんうちの学校では、水滸伝の中国語版を英語に翻訳しながら授業を進めていく。日本語に翻訳しながらだと完全に理解できることこの上ないと思うが、英語の国でやっている以上当然英語に訳す。そのため、出来るだけ多くの予備知識を得て、全体像を把握しておくために、日本に帰ったときにこの本を買ってきた。
さて、人肉饅頭屋というのは、もともとの水滸伝のなかで出て来る一種の峠の茶屋的な店で、有名な豪傑がしびれ薬を飲まされ、あわや殺されて饅頭の餡にされてしまいそうになる、、、というシーンのことだ。しかもこういうシーンが出てくるのは一度や二度ではない。
武松という水滸伝の中で有名な豪傑は、峠の茶屋で饅頭を食い、あんこの中に陰毛(!)があるのに気付いて、ここが人肉饅頭屋だと気付くというくだりがあるらしい。そして肉付きが良かったか、金を持っていたか出ターゲットにされた本人は、しびれ薬をのんだふりをして店主たちをやっつけるという話。うーん。
峠の茶屋や、梁山泊近くの茶店で、お客にクスリを飲ませて殺し、金品を奪おうする場面は見たが、実は元ネタでは全部人肉饅頭屋なのだろうか?
もう一つびっくりしたのは将来梁山泊の頭領となる宋江が、彼を陥れ殺そうとした黄文炳という男をとらえ、梁山泊に持ち帰ったときのはなしだ。その後多くの武将たちが黄文炳を裸で吊るし、取り囲んでいるときに黒旋風李鉄牛こと李逵は「こいつはよく肥えているから、焼いてくったらうまそうだ」といって、足の方からいいところを少しづつ切って、炭火で焼いて酒の肴にしたというのだ。しかも、その場に同席した晁蓋までもが「まったくだ、ナイフを持ってきて火鉢に炭火をおこし、少しづつ切って、焼いて酒の肴にして、そうして宋江の恨みを晴らすことにしよう」といったらしい。そして最後に李逵は黄文炳の腹を割き内臓を取りだして酔いざましのスープをこしらえたらしい。
なんともえぐい。横山光輝のマンガから入った俺には刺激が強すぎる。なんでこんな鬼畜小説をしかもイギリスの大学にまで来てやらなくてはいけないのか? この描写、実は中国でもあまりのひどさに中国共産党の差し金か何かで、内容が変えられたり、はしょられたりしているらしい。多分うちの学校で使われている教材も、この残酷な描写はカットされているに違いない。先生に聞いてみよう。
もう一つびっくりしたのは、さっきも言った李逵の残虐ぶりだ。こいつは2丁の斧を振り回す暴れん坊だが、けんかっ早いだけでいいやつなんだとばかり思っていたら、実はとんでもない殺人鬼らしい。いまちょうど学校で宋江が神行法をあやつる戴宗と出会い、そして李逵とも出会う場面をやっているのだが、この本を読んで、李逵の本性を知ってしまったらどうもただのB級ホラーやくざ小説を読んでいるだけにしか思えなくなってきた。いや、中国の大衆小説だし、多分もともとそんなものでしかないのかなという気もしてきた。それにしてもびっくりした。
びっくりするのはやはり、中国人の考えの中に人肉を食うという行為が「ひとつの可能性」としてあり得たということだろう。恨みのある相手を殺してくってしまうというのは、中国では古来からあったらしいが、大衆小説でここまでめちゃくちゃ言わなければならないのは、ヨーロッパの中世にもにたり、なんとも不気味だ。高島俊男氏が言っていて面白いのは、日本の大衆小説である忠臣蔵で、もし吉良邸に討ち入りした四十八士が上野介を取り囲んで喰ったら大衆的支持は得られないだろうという点だ。たしかに、、、。日本と中国の間にはやっぱり思いもつかないような違いがもっともっと転がっているような気がする。
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