早瀬の呟き日記

2002年06月13日(木) 「オイディプス王」

野村萬斎主演、蜷川幸雄演出「オイディプス王」を観て来ました。ちょっと風邪気味だったので出かけるぎりぎりまで寝て体力充填してから外出。イキナリ寒くなるなんて詐欺だああ(泣)
さて、この作品はギリシャ悲劇ですが、同じ悲劇でも「ハムレット」の釈然としなさ(笑)はなかったです。次第に明らかになっていくオイディプス王の過去と真実、推理小説っぽくていいですね。(もっとも観客は早い段階で真相に気付いちゃうので、ちょっともどかしい部分もありますが。「早く言っちゃえ!全部言っちゃえ!」って思う/笑) しかしいくら知らなかったとは言え実の母親と結婚するとなると、最低でも16歳は年上だと思うんですが・・・そっちの方がスゴイ気もするが(笑)
オイディプス王は有能で自信家、責任感も強い。けれど傷つけられるとカッとしやすい。その、強さと弱さのアンバランスが非常に魅力的なキャラだと思います。自分の眼を潰して血塗れになって出てきたあたりはかなり切なくて、うああーって掌を差し伸べたくなる感じ。そりゃ萬斎様だからだろ、というツッコミはしないように。それは自明です(笑) 細川勝元の時もそうでしたが、俺様受オーラをばしばし出してるんですよねえ・・・。色っぽいんですよお。えへえへ。
麻実れい(今気付いたけど、「おにいさまへ・・・」の朝霞れいはこの人がモデルか?)はきれいでした。でかかったけどな(笑) 真っ白な衣装が似合っていたし、出番が少ない割に存在感もあって、年齢不詳な感じが母であり妻でもあるというイオカステにぴったりでした。逆に言うと、近親婚の生々しさは殆ど感じられなかったです。
東儀秀樹氏の音楽、とても良かったです。勝手に、SUGIちゃんと組んだら結構いいかもなどと思ったり(笑) 衣装も王族の白と長老達の赤系とその他(コラ)のベージュ系だけというシンプルな取り合わせで、どの芝居とは言いませんが変なジャポネスク風味じゃなくてよかったです(笑) 鏡を使った舞台装置もよかったなー。広く見えたし、迷宮っぽい感じもして。
てことで、全体的にはとてもよかったのですが、ところどころその・・・やりすぎっつーかこりゃ笑っちゃうよオイ、みたいなところもあり(笑) 初っ端で嘆願者達が泣き喚きながらぐるぐる回ったりばたばた倒れたりしてるのはちょっとどーよとか、全てが判明してオイディプスが絶望し自分の眼を潰してからがやたら長かったりとか(笑) そんなに微に入り細に入り説明せんでもいいから、っていう(笑) 「ハムレット」も死ぬまでやたらと喋ってるしな・・・フツーもう死んでるだろ、ってくらい長々と喋っている(笑) 悲劇は場合によってはギャグになっちゃうとこが難しいと思います(笑) あと、古典作品はとにかく1人あたりの台詞が長い。展開も遅い。その辺現代人の観客にはちょっとつらいですけど、まるで神が与える運命の見世物のようなオイディプス王を現代の観客も憐れむことができれば悲劇として完成なんだろうなーとかぼんやり考えてたら、パンフで萬斎様がもっと的確に言っておられました(汗) 「オイディプスは神にとっても観客にとっても生贄」なのだそうです。うーん、確かに、「共感」するタイプの主人公じゃないもんね。観客の視線はどちらかというと「神」に近いから・・・ああ、それでちょっともどかしいぐらい彼が真相に気付くのが遅いのか。なるほどね・・・。
「生まれてはならぬ人から生まれ、交わってはならぬ人と交わり、殺してはならぬ人を殺した。それがこの俺だ!」
じゃあ殺したのが父親じゃなきゃよかったんか?ついでに4人の従者殺しとるだろお前、というツッコミは置いとくとして、このちょっと大袈裟な台詞は「見世物」としてのオイディプスが叫ぶ自虐の台詞、観客という「神」へ向けた言葉だったんだなあ。
ところで席が中2階の右側だったんですが、直線状に席が並んでるので隣の人が身を乗り出してるとこっちも身を乗り出さなくちゃならなくて、首と背中が疲れました・・・。シアターコクーンはあまり観客にやさしくない劇場です・・・。


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琳 [MAIL]