| 2004年09月22日(水) |
「グラン・ヴァカンス」 |
飛浩隆という作家を私は知らなかった。日本のSFは殆ど読まない。松本零士漫画や銀英伝などの「キャラ萌え」は別だが、それはこれらの作品が「SFの本質」とは関係のないところで成り立っているからである。「SF作品」には2つある。「SFを装いとして利用したもの」と「SFの本質に触れたもの」。これはたぶんあらゆるジャンルに該当すると思う。ボーイズラブにさえ。まあそれはともかく、イーガンやチャンのような書き手は日本にはいないし、また受け入れられないだろうな、と思っていた。 しかし、いた。飛浩隆である。彼自身あとがきに書いている。「清新で、美しく、残酷であること」それが自分にとってのSFだと。 「グラン・ヴァカンス」は素晴らしい。ある日を境に誰も人間の<ゲスト>が訪れなくなった仮想リゾート空間で、千年同じ夏を繰り返すAI達。そこへ唐突に侵食を始めた<蜘蛛>への、絶望的な攻防戦が始まる。 はっきりいって、残酷な物語である。しかし、筆致はあくまでも静かで透明で、不快感を読み手に与えることはない。書き手の突き放し方が上手いのだろう。粗雑な比較だが、森博嗣に近い、と感じた。理系的なドライさと詩情に満ちている。「世界の謎」に惹かれる向きにはきっと好かれる作風だと思う。私がそうだ。 これは「廃園の天使」三部作の一巻に当たる。エンターテインメント作家としては致命的に遅筆な作家だが(笑/従ってどうやら専業ではないようだ)少しでも早く続きが読みたいと思う。てな訳で「象られた力」も買ってしまった(笑)
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