12年ぶりの「ミス・サイゴン」である。マチネで、エンジニアは市村正親、キムは松たか子、クリスは石井一孝。冒頭から、懐かしいあの音楽に引き込まれる。市村氏の「売ぅぅり出っすっぞミス・サイゴン♪」も健在である。舞台装置は殆ど変わっていなかったし、歌詞も細かい変更はあったが概ね同じ。当時、一部物議をかもした「ブイ・ドイ」の訳も結局変わらなかったようだ。それだけ出来のいい作品だったのだと、12年間色々な舞台を見てきて再認識する(笑) ナンバーも良い。歌唱力は、市村・松・今井が突出していた。四季や宝塚ならこれほどばらつかないだろう。まあ仕方ない。 松たか子は今まで見た舞台の中で一番良かった。特に今回のキムは、初演に比べると気の強い、しかしぎりぎりの精神状態で必死に生きている張り詰めた空気があった。ラストは、初演ではいささか唐突な印象があって「何も死ななくてもいいんじゃ」と思ったのだが、今回は「ああするしかなかった」という説得力があった。キムの、ぎりぎり感のせいだと思う。 クリスは、下手ではないが上手くもない(笑)つか、どの歌も歌い方が一緒なのはいかがなものか。まあ、キャラクタ自体が好かれない役どころなので(笑)大して文句も出ないだろうが、たまには「思わず同情しちゃうようなクリス」がいてもいいとは思う。あれだけ不本意な別れ方をしておいて一年で別の女と結婚するのは早すぎるし、自分だけ人生をリセットした気でいるのがむかつくし、辛い目に遭ってるのはお前だけじゃなかろう、と腹の立つ男である。はっきり言って本当にエレンを愛しているのかどうかも怪しいものだ。 初演では、タムを引き寄せるエレンの手から市村エンジニアが彼を奪うように抱き上げることがあり、いつもという訳ではなくそのときそのときの流れで決めているとイッチーは言っていたが、今回はエレンとキム&クリスの間で迷った挙句、ただただやるせない、という感じで立ち尽くしていた。全体にイッチーのエンジニアは哀愁が加わった感じ。個人的には、エンジニアがタムを連れて行くという終わり方は好きなんだけどね。でも子供の教育にはよろしくないけどね(笑) ところで私は昔から結構トゥイが好きで、少なくともクリスよりは彼の方が愛が深いと思うのだが(笑)キムとタムが一緒に幸せになる方法がないというのは、悲劇だよなやっぱり。筧さんはエンジニアもいいけどトゥイも似合うと思うのは私だけか。もうちょっと若ければトゥイやれたのにな。すっかり忘れていたが、婚礼のパーティーのとき乱入してきたトゥイに手下がくっついてきていて、しかも彼はまるでボディガードのように、トゥイと同時にクリスに銃を向け、それまた無表情でやるあたりが・・・「コイツ、トゥイの何なんだろう(腐女子モード発動)」って感じなんだなあ。彼が死んだとき、死体を見る仕草が大変に「慕っていた人が死んだ」という切なさを醸していて、「やっぱりコイツはトゥイが好きだったんだろうなあ」と思わせたのだった。一途な男は好きだ。多少常軌を逸していても(笑)ストーカーは許せんけどな。 カーテンコールでは、タム役の子が腕を広げて待っているイッチーをスルーして(笑)松たか子とエレン役の人との間に入って手を繋いだのがウケた。「そうさ男は男だぜ♪」ってことか。2回目のカーテンコールで、イッチーが手を差し出したら石井@クリスが「えっ、繋ぐんスか」みたいな感じで素でボケていたのも笑った。 見終わって、もう一回分くらいチケット買っておけばよかったと、痛切に思った。今度は是非、筧さんのエンジニアが見たい。11月までの間にもう1回行こうかな。筧さんを見に!(笑)
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