カンラン 覧|←過|未→ |
楽しみがひとつ減った。 私の背丈よりすこし高いぐらいのあたりに 揺れるオレンジ色の大きな花が咲かなくなった。 毎年どこか南国めいたその花を 数日間見上げて過ごし 早朝の地面に落ちたものをひとつかふたつ拾っては 本にはさんで押し花にするのが好きだった。 誰も触っていない, 誰も踏みつけていない, ひんやりとしたその花を小道で見つけるのが好きだった。 そのかわりに今年は何枚も何枚も きれいな落ち葉を拾ったんだ。 しつこくしつこく去年あの花が咲いてた場所を 何度も見上げながら。
|