カンラン
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2003年12月13日(土) 嗚呼、懐かしき駅前通り





私が3つの頃まで暮らしていたのは駅に程近い町。

友達になれるような年まわりのこどもはほとんどいなかったにせよ

繊維問屋が軒をつらね、わりあいと賑やかしい場所でした。

それがいまやシャッター通り。

橋をひとつ渡れば広島の玄関口、

ほんの少し足をのばせば市内中心地。

そんな言うことなしのはずの場所にぽっかり開いた穴のよう。




ところがその界隈に最近、

若い人たちがお店をぽつぽつと出し始めているという話を聞いたのはいつだったっけ。

ひとつふたつ理由があってなんとなく

訪れる決心がなかなかつかなかったのだけれど、

駅の本屋さんに行きがてらふらふらと路地に足を踏み入れた。

ちょっとしたタイムスリップごっこ。




ただただ素直にほくほく湧き上がろうとする懐かしさを、

見覚えのある建物の間からのぞく

もの悲しさのつきまとう曇天模様の空が邪魔をする。

上から無理やり蓋をされたようで息苦しい。

お母さんやおばあちゃんの手を放してしまったならば

必ずや迷ってしまうと信じてやまなかったあたりの路地はどれもあっけないほど短く、

東に向いて歩いても南に向いて歩いてもすぐに大通りにぶつかった。

私たち家族が去ったあと、寂れながらも呼吸し続けてきた小さなこの町。




簡単に足をのばせる場所であるのに、

次にここを目指して歩いてくるのがいつのことになるのか見当もつかないので、

立ち寄った4軒のお店で一点ずつ小物を買った。

どれも感じの良い女の人(女の子、と言ったほうがしっくりくる人も。)が営んでいて、

どの店主さんとも買ったものについて、町について、少し話し込んだ。




路地に足をふみいれてから降りだした突然の大雨も

そんな風に時間を過ごしているうちにすっかりあがっていて、

ちょっと長い雨宿りをさせてもらった格好になった。




それなのに、どうも時がとまっていたような気がして仕方ないのです。








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