カンラン 覧|←過|未→ |
私の電話らしくない電話がうぃぃんうぃぃんと長いこと唸った。 なんと珍しき出来事。 かちっと出てみると関東に住む友人から。 時の経過とともに、より一層環境悪化の一途をたどっている彼女の勤め先の話をして、 一息ついた彼女がふと「私、今年で29だよぉ。」ともらした言葉に一瞬混乱。 あぁ、そうだっけ。 え?つーことは私、今年28? あぁ、そうだっけ。 いつのころからか調子よくわからなくなる自分の年齢。 めったに会えない友達は私の中ではいつまでも当時の年齢のまま、ってのもあるし。 昔は28とか29ってすんごい先のことだと思ってたけど、 わずか数ヶ月先に手をこまねいて待ってるわけで。 すごいな、結構生きてるな、俺たち、みたいなことを話した。 木だったら、えいやさっと切ったところにほぼ30本に近い輪っかが姿を現すわけです。 すげー。 そんな輪っかを1本1本指の先っちょにひっかけて食べてしまいたい。 両手の指じゃたりないから、食べたはじからまた新たにひっかけて。 辛いの、甘いの、しょっぱいの。 それなりにいろいろあったしなぁ。 最後の5本ぐらいのところからじょじょに痛みに似た渋みが舌先にはしり、 吐き出してしまいたいと思ったところ、 残り3本あたりで噛み締めるほどにじわじわと体に染みわたる甘み。 そして今はしあわせだと思う。 日々、許容量ちいさなこの頭を騒がすことが起こったりもするけれど、 ここちよくやすらげるふかふかの枕があるからだ。 頭を沈めるとそのかたちにふんわり窪んでくれて、 朝が来ると起き上がるのを助けてくれるようにしてふわっと弾む。 うっすら浮かびあがる最後の1本はきっと私の気に入る味だろう。
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