カンラン
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2004年03月12日(金)


12枚目の定期が切れた。
帰りの列車がホームに入ってくるまでの間に、顔なじみの駅員さんに回数券の発行をお願いした。
「寂しくなるのぅ。」と言いながら機械に向かって打ち込んでくれるその姿をぽうっと眺める。

その昔、滋賀県はM市から、数週間、京都の学校に通ったことがある。
今思えば、定期券を買ったほうがお得だったんだろうけども、貧乏性の私は一時にどかんと高額のお金を払うことに不安を覚え、回数券を買った。
親元を離れての居候の身だったこともあるし(何かのときにお金はとっておきたかったんだろう、多分。)、買った定期券を失くしたら自分では取り返しのつかないことを危惧した上でのことだった。
そのとき買った回数券は、たしか、いわゆるほんとの綴りのかたちをしていて、金額部分は駅員さんがスタンプで押してくれた。一枚一枚ぴりぴりちぎっていくものだ。

そんなしわしわな記憶を何年かぶりで頭の中から引っ張り出していたら、めりめりと印字音が聞こえ出し、11枚の綴りを手渡された。
青色をしていて、うんと遠いところまで行ってしまえそうな切符だった。
少し寂しい。駅員さんに会えなくなることも、すっきりきれいな11枚の切符も。

私はあともう一度、この回数券を買う。


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