春の風に、足元をすくわれる。しっかりと地面をつかむようにして立っていた足は巻き起こる砂埃にくすぐられ、平穏なこころを示す足跡は見る見るうちに洗われ消え行く。生ぬるい風がおさまった今も耳の奥ではざわめく木立。目をつむってやり過ごそうか。自分が望まない限り、吹き飛ばされることはないのだから。