カンラン
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2004年05月15日(土) |
きれいなものときたないものと |
今の職場に移って、はじめての年休を使った。 元の職場の人たちが開いてくれる飲み会(昼)に出掛けるために。 一切気がひけなかったと言えば嘘になるけど、切り込みにはうってつけだったかも。(年休はそのためにあるとは言え、)本来の意味での自分のための休みを取るよりかは割り切って言い出せた。
お昼少し前、指定された列車に乗っていざ東へ。 現在通勤に使っている電車より早いスピードでがたごと進み、停車する駅は大きく改札だってきちんとある。久しぶりの感覚。ついつい元の職場がある町まで乗って行ってしまいそうな自分に危機感を覚え、指定された駅に着くまで、ばか正直に起きていた。景色を見ておきたかったのもあるし。本当、今日が終わってしまうと、もうなかなかこっちの方まで足をのばす機会はないと思う。 きょろきょろしながら改札を出ると、見慣れた笑顔にぶつかった。「相変わらず暑苦しい格好しとるね。」などというつっこみを丁寧に受け取りつつ、会食の場へ。 お昼だということも忘れてしまいそうになるぐらい飲んだ。肴は高級な会席料理。食べたことない魚やら蟹やらいっぱいいっぱいお腹に詰め込んで。 島の広島弁を喋るKさんの小さくてきれいな横顔をずっとずっと眺めてた。去年、一年間折に触れてはしてたみたいに。相変わらずきれいだ。今までこんなにじっくり見入った他人の顔ってないかもなぁ、と思って、見貯めしとかなきゃという気になったのかも知れない。お酒ってこういうときには便利かも。さすがにしらふだと恥ずかしさがつきまとう。
酔っ払った頭で時刻表を用いて市内到着時間調べた上で、待ち人に連絡。 こめかみあたりに決して不快ではない頭痛を覚えながら落ち合ったところ、待ち人は私が観たいと言っていた映画を観ようと提案してくれた。嬉しい。けど、頭痛がひどくなるのは回避できなさそうだ。
夜。 いつも通り楽しいひとときを終え、電車に乗り込んで窓越しにさようならをしたら思い出した。ふと、高校時代のこと。 私はあんまり高校時代が好きではなかったので、学校での出来事とか普段あんまり思い出すこと、ない。(濃密だった寮での生活は別ものと認識している。) なのに、思い出した。自分がしたひどいことを。悪気があって引き起こしたことでは、決してない。それは今、年をとって、離れたところからもう一度思い起こしてみても変わらない。でも、私は軽率だったんだ。ちっぽけな、たった一人っきりの自分という存在が周りに与える影響力を軽く見ていた、このひとことに尽きる。 そして結果として、ひとを傷つけた。多分、いや、間違いないと思う。よく知った人ではないので、無責任ながら憶測でしかないんだけれど。 その後ほとぼりが冷めて少しばかり経った頃、トイレに心無い人が書いた落書きを見つけて、指で擦って擦って擦って消した。オレンジ色のドアは鉛筆跡で気味の悪い灰色になって、そこだけが異様に目立っていた。まだなにかもっと汚らしい文字が書いてある方がその場にしっくりくるような感じさえした。 心無い人の書いた落書きを擦り取った心無い私の指は、洗面台で何回も何回も石鹸で洗って、その上蛇口にぎぎっと擦りつけた。その後何人の人がひねったところで私のいやらし行いは水に流れたんだろう。
きっと、映画が引き金。
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