カンラン
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スカーフを首にぐるぐる巻いている人に向かって指さしで「どうしたん?おしゃれ?」と言っている人(結構年配、結構大きな声)を発見。これは、まさに仕事をしていた頃におじさんあたりからよくきかれた類のコメントで、懐かしい感じすらする。
「おしゃれ?」との質問には、<私にはそうは見えないけど>という前提がある上で、それっておしゃれなの?ときいているわけであって、答える側も「そうです、これはおしゃれなんです」とは言いにくい、と思う。 人がおしゃれと思っていることが自分にとってのおしゃれかどうか・・・そこは一致させておかねばならぬことなのか・・・どちらの感覚がよりおしゃれなのか白黒はっきりさせるのか、ここで・・・そして周りはそれとなく事の成り行きを固唾をのんで見守っているが・・・などとそばで悶々と物思いにふける。
そうこうしているうちにその質問に対する返しのことばを聞き逃してしまい、これ以上ないぐらいに後悔する。こういうとき、一体どんな言葉を返したら正解なのか。中からネギを取り出せば「おおっ!」と歓声があがるか?
注文していたラグが届く。そろそろフローリングでは寒々しくなり、ホットカーペットカバーとしても使えるものを購入。引っ越しの際、今まで使っていた薄っぺらの敷物も一応処分せずに持ってきたものの、広げてみると思ってた以上に色が褪せてる。結婚前、つきあって間もない頃に買って、つちのこ氏の部屋で使ってたものだもの。無理もない。
今回悩んだ末に買ったものは、花粉やアレルギーにも効果あるというもの(つちのこ氏:花粉、ぴのきと私:ダニ、ハウスダスト)。ちなみに、色は、赤茶系のカカオに惹かれつつも、ベージュに決めた。一時期流行った、お湯でつくる顆粒タイプのカプチーノみたいな色。発泡してる感じ。なかなか部屋になじんでいる、と思う。
ためしにごろりと転がって指で撫でてみたら、ずっとずっと昔のこども部屋のカーペットを思い出した。ベージュと茶の混じったこんな色合いだったような気がする。それよりあとの記憶を押しのけて、そこだけがぴょんと勢いよく飛び出した。
あの頃、家にあったものに不満も何も感じることはなく、ひとつひとつのものが集まったものこそが自分の家だった。親はそれなりに、ああでもないこうでもないと迷ったり、予算的なことで諦めたりすることもありながら選んだんだろうなあ。なんとぼうっとして幸せな存在だったんだろう、子どもの私よ。
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