カンラン
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この春は、桜の花の写真をたくさん撮った。
まだ寒かった神戸に始まり、徳島の中央公園に植物園、天神社に春日神社。あちこちでぱちりぱちりと写真におさめてまわった。いつか、ここではないどこかで思い出し、振り返るときのための写真。 地元ではない、転勤でしばらく住んだ土地というのは、一体自分の中のどこにしまわれるのだろうか、といったことを時々考えるようになった。いつか懐かしんでふたたび訪ねてくることはあるんだろうか・・・なんとなくだけど、ないような気がするのだ。自分の性格的に。3年暮らしたジュネーブも、7年暮らした京都も、ぷつりと切れたままだ。(友人の結婚式に参加する目的で再訪したことはあったが、暮らしていた町や学校には近寄らなかった) 冷たい人だといわれることも、あり。
波立つこころを恐れる臆病な自分のために、写真を残しておく。
最近は暇さえあれば本を読んでいる。夜、ソファの上でごろごろとしてても寒くないというとっておきの季節だ。私にとっては、秋より春の方がお誂え向き。
今日は、シリーズものの最後の一冊を読み終えて、満腹感と寂しさとを噛みしめている。 立ち止まって、ぽかりとあいた穴のふちを撫でている。
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