.◆◆第2話:『卒業』��

  
  〜♪卒業できない恋もある 街も人も流れて行く
   卒業できない恋もある 1秒ごとに好きになるのに
   どうして君はずっと手を振るのでしょう♪〜

 春の駅。
 桜の花が一面に降り注ぐ駅のホームに、梢ちゃんが一人で立っている。悲しそうな、今にも泣きそうな顔であたしをじっと見つめている。

 どうしたの、いまあたしもそっちにいくから・・・
 だけど、走っても走っても梢ちゃんのところにはたどり着けなくて、梢ちゃんがどんどん遠ざかっていく。やがて、あたりに響き渡る発車のベル。振り向きもせず電車に乗る梢ちゃん。
 まってよ、どうして?どうして何も言わずに行っちゃう訳?どこに行くの?
 待ってよ梢ちゃん、こずえちゃーん・・・・

 がば、とはねおきる。
 最近、いつもこの夢ばかりみてる。それで梢ちゃん、と叫んだ自分の声で目がさめるのだ。
  
 ♪ぱるるるる・・・・・・・・ 電話の音がする。
「電話よ、楓。梢ちゃんから」いつのまにか樹(いつき)おねーちゃんが部屋に入ってきていた。
「うん・・・」ねぼけ眼で電話をとる。
「あ、かえで?楓、今日ひま?」電話の向こうから梢ちゃんの元気な声が飛び込んでくる。ひまだけど。そう答えるあたしに遊園地行かない?と言う。一瞬、嫌な予感がよぎる。夏樹くんと3人で行くなんて言い出すんじゃなかろうか。でも、一緒じゃないとわかってほっとする。十二時に待ち合わせをして電話を切った。  
 朝ごはんを食べようと、下のキッチンに下りていくと先にテーブルについていた紅葉(くれは)おねーちゃんがあたしを見て一言。  
「あんた、梢となんかあったんじゃないの?」別に何もないよ、と言うと  
「だって、最近あんた変よ。毎朝『こずえちゃーん』だもん。そりゃもー悲しそーな声で」
  
 別に何もないもん、と横を向く。時計を見るとすでに十時。あたしはあわてて部屋に駆け上がる。出かける支度をして家を出る。
  
 外は夏らしいぴーかんの青空。
 思えばこれが、すべての始まりだったのだ・・・。

 なぜか、女の子の友達がいなかったあたし・森本楓にとって、相川梢は初めて親友と呼べる女の子だった。   
 中学の後半からふとしたことが原因でクラスの女子を敵に回してしまい、中3の一年間はほとんど一人だった。みんなに仲間外れにされ、あることないこと噂を立てられ・・・。学校にも行きたくなかったし、死のうかとも思った。
 そして、人を信用できなくなった。最悪な中学時代、同級生たちから逃げるように、あたしは自宅から遠く離れたこの高校を受けて、合格した。
 あたしのことを、過去にあったことを何も知らない人たちばかりのこの学校で一からやり直そうと思った。

 「もりもとさーん!一緒にお弁当食べよーよ!」
 入学式の翌日、高校に入って初めてのランチ・タイム。
 何もかもやり直そう、そして友達を作ろう・・・と決意して高校生活に突入したものの、知らない人ばかりの1ーAの教室であたしはとまどってしまった。お弁当の時間になると同じ中学の子同士でグループを作ってしまうからだ。仕方がないから一人で裏庭ででもお弁当を食べようかな。そう思って席を立ちかけたとき一人の女の子が声をかけた。ふりむくと、窓際にいるグループの中の一人があたしに向かって、笑顔でおいで・おいでのポーズをしている。
 背の高い、ショートカットの女の子。ひとなつっこそうなくるくると動く瞳が印象的だった。 話をするうちに、仲良くなるごとに、人間不信は消え、あの時声をかけてくれたグループのみんなは大切な友達になった。
 ロック大好きで、中学の頃からバンド活動をしてる絵里、こと海藤絵里(かいとうえり)。 お菓子づくりが趣味で、いつも差し入れしてくれる美和ちゃん、こと笹原美和子(ささはらみわこ)。うちの学年の主席入学の優等生、そして小説家志望の瞳子さん、こと牧島瞳子(まきしまとうこ)。同い年とは思えない、おしゃれで大人っぽい雰囲気の麻衣、こと谷村麻衣(たにむらまい)。
  
 そしてこの性格や個性のまったく異なる4人をまとめるのが梢ちゃんだった。
 お互いになんでも相談しあう、6人の間に秘密はない、一人の悩みはみんなの悩み。それがあたしたちの約束事だった。実際、あの日まで他の5人に対して隠し事はなかった。
  
 そう、「彼」に対する気持ちに気づくあの日まで・・・。

2002年03月22日(金)◆◆


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