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.◆◆第2話:『卒業』��
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「かーえでっ♪一緒に帰ろう」 部活を終えて音楽室を出ると、梢ちゃんがにこにこして立っていた。 「もう、一緒に帰りたいのは私じゃないでしょ?」苦笑いするあたしにばれた?とばかりに舌をちょろっと出して笑う梢ちゃん。そのとき、 「あれ、相川さん今日も森本さん待ってたの?仲がいいんだね」 あたしの後ろにいた富田くんの声を聞いた瞬間、梢ちゃんの表情が今まで以上に綺麗な、まぶしい笑顔に変わる。ああ、本当に彼が好きなんだなあ、と思えてなんだか微笑ましい。 「富田くんもう帰るの?」梢ちゃんが聞く。 「いや、ちょっと寄り道して帰ろうかなって思ってる」 「じゃあ、駅までは一緒に行こうよ!いいでしょ?楓も」 梢ちゃんの好きな人が、同じ吹奏楽部の富田夏樹くんだと知ったのは1年生の夏休みが終わった頃だった。それから梢ちゃんに頼み込まれて彼のデータとか調べるようになって、それまでは挨拶程度だった彼と話をするようになった。今じゃ私まで富田くん通になれるほど彼の事を知っているくらいだ。 中学時代、友達にまで裏切られ、冷たくされたことのあるあたしにとっては、こうやって梢ちゃんが頼りにしてくれること、梢ちゃんの力になれることがうれしくて、こういうことがぜんぜん苦にならなかった。それだけだった。本当に3人で友達としていられるひと時がすごく幸せだった。
・・・それなのに。 それがいつ、あたしの中で富田君への気持ちが友情から恋に変わっていったのだろう・・・。
「・・・ねえ、もし自分の彼が友達のこと好きだとしたらどうする?」 「・・・なにそれ?」昼休み。みんなでお弁当を食べて美和ちゃん手作りのデザートでしめるいつもの昼休み、思いがけない瞳子さんの言葉に目をぱちくりするみんな。 「なに?とーこさんって三角関係に悩んでるわけ?」梢ちゃんの言葉をクールに否定して瞳子さんは話を続ける。 「違うわよ。今度の文芸部の作品のテーマが『女の友情』なの。・・・だけどあたしはそんな経験ないからねえ。だから彼氏持ちの梢と麻衣に聞こうと思ったの。」 麻衣には社会人の彼がいて、梢ちゃんは夏樹くんに告白して彼と付き合っている。 「じゃああたしたちは問題外って訳ね。」絵里がふくれる。 「まあまあ。じゃあ絵里たちにはこうしようかな。もし友達の彼に片思いしてて、その彼も自分のこと好きだと言ってくれたらどうする?友情をとって彼とはつきあわない?それとも、友達なくしても恋の成就をとる?・・・どう思う?楓。」 その言葉にどきっとした。ひょっとしたら、瞳子さんはあたしの夏樹君に対する気持ちを知ってるんじゃないだろうか・・・そう思って。 あたりさわりのない言葉でその場をかわしたけれど、あたしはずっと考えている。あたしと夏樹君は同じ部で、梢ちゃんは夏樹君の彼女。いつのまにか、3人でいることが多くなった。あたしは梢ちゃんという彼女がいるのに夏樹君を諦められない。もし、万が一夏樹君とあたしが両思いだったら、そのときはきっと梢ちゃんとは友達じゃいられなくなることを。それだけ梢ちゃんは彼のことを一途に思っている。それに梢ちゃんを失ってまで夏樹君と恋人同士になりたいとは思わない。いや、なれるなんて思ってないけれど。 夏樹くんと梢ちゃんとあたし―3人のバランスが好きだ。これを壊してしまうくらいなら・・・自分の思いを殺してしまう方がいい。たとえ恋人にはなれなくても友達として見つめていられるのならそれでいい。 夏樹くんのことが好き。泣きたいぐらい大好きだ。いつも彼のそばにいられる梢ちゃんになりたいとずっと思っていた。でも、そんな思いをひっくり返すぐらい梢ちゃんのことも大切だったのだ、あたしにとっては。 いつまでもこのままでいられたらいい、この居心地のいい空気の中にいたい。これからも、ずっと、ずっと・・・。 だけど、その願いもあの日、壊れてしまった。・・・恋の成就と引き換えに。 『卒業』��につづく。
2002年03月28日(木)◆◆
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