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.◆◆第3話:『眼鏡越しの空』��
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8月の登校日。 結局あれから夏休みに突入してしまったため、本並先生にはあの日以来会っていなかった。ホームルームが終わった後、教室を出ようとしたあたしを彼が呼び止める。 「話がある。ちょっと待ってろ」その目は恐いほど真剣だった。 「あたしは話すことなんてありません」あたしはまっすぐに彼を見つめることができない。 「先生、牧島さんはこれからあたしたちと約束があるんです」事情を知ってる美和子が横から助け船を出してくれたけど。 「十分で終わる。牧島を貸してくれ」先生の気迫に押されて美和子がうなずく。 ほとんどひきずられるようにして視聴覚室に向かうあたしたち。視聴覚室に入るやいなや、小さな包みを投げる先生。 「瞳子、それ誕生日のプレゼント。こないだ渡すの忘れてたから」 そして彼はまじめな顔になり、あたしの目をのぞき込むようにして聞いた。 「瞳子は俺たちの結婚に反対か? 瑶子が言ったんだ。俺たちの結婚に瞳子が反対ならば瞳子がわかってくれるまで待ってくれ、と。俺もその言葉には賛成だ。だから知りたい、瞳子の気持ちを」 あたしはしばらく何も言えなかった。だけど、これを逃したらもう二度とチャンスはないかもしれない。あたしは思い切って言った。まっすぐに彼の目を見つめて言った。
「あたしにそれを言わせるんですか?あたしは先生のことが好きなのに」と。
「瞳子・・・」先生は驚いたのだろう。しばらくあたしたちの間に流れる沈黙。やがてその大きな手であたしの頭をくしゃ、となでる。 「ごめんな、瞳子。おまえの気持ちに答えてやれなくて。 だけど俺は瞳子のことを大切に思ってる。瑶子だってそうだ。 瑶子はいつも言ってる、瞳子の強さに憧れる、って。 自分が体が弱いせいで、いつも瞳子が寂しい思いをしてるのを、苦しんでるのを見てきたから、瞳子のことを大事にしたいって。俺だって同感だ。 瑶子が俺のプロポーズにOKしてくれたとき、瑶子と結婚できると同時に、瞳子が俺の妹になるんだ、って思ってうれしかったんだ」
もうあたしにはそれで十分だった。少なくとも本並先生があたしのことを嫌ってるわけじゃないってわかって。 「じゃあ、先生もう行くね。美和子達が待ってるから。」 あたしは視聴覚室を出る。予想通りの恋の結末にいまさら涙は出なかった。 教室に戻ると、心配そうな顔の美和子・梢・絵里・麻衣・楓が待っててくれた。 「待たせてごめん。さっ、帰ろうか!」 あたしは笑顔で呼びかけた。もちろんつくり笑いなんかじゃない、心からの笑顔(のつもり)で。
(『眼鏡越しの空』第6話に続く。)
2002年04月28日(日)◆◆
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