コハルビヨリ
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バイトの帰り道、きれいな月が出ていた。
月にうさぎがいっぴき見えた。
寂しいと死んじゃうのに、見えたのはいっぴきだけ。
側には誰もいなくても、きっと彼(彼女?)はひとりじゃないのだろう。
地球に恋人がいて、ずっと想ってるのかもしれない。
月と地球の遠距離恋愛。
月のうさぎは、月に自分の姿を浮かばせる。
せめて恋人の瞳に映るために。
その瞳に見つめられるために。
言葉も届かない距離ではそれだけが唯一の便り。
いつか会えるその日を信じて恋人を想うから生きている。
なんてね。
あんまりうさぎが寂しそうで。でもとてもきれいで。
恋人にはきれいな姿を見せたいものね。
全身で「だいすき」って伝えてる。
月と地球に比べたら私たちはずいぶんと近くにいる。
「いつか」よりは確実に近い未来会えるはず。
うさぎの恋を想う月夜の晩。
うさぎになって君の元へと駆けていきたかった。
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