コハルビヨリ
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今日もお仕事いったんだろうな。
頑張って帰ってきてね。
雨。
君が東京に行ってから初めて会いに行ったとき。
行ったときは晴れてたけど途中で雨が降った。 君と離れて行動してる間に安い傘を買った。
帰るとき、私はその傘を置いていった。 君の部屋に私がいた痕跡を残したかったのかもしれないね。 君はお気に入りをひとつだけ持ちたい人だから、 使わないのは分かってたけど。
あの日雨の中君が来るのを待ってた。 君は傘も差さずに歩いてきた。 私が買った傘の色を褒めてくれたね。
付き合いなおすことにして、君の実家に行ったとき その傘が傘立てにあるのをみつけた。引越しのときにも 捨てられていなかったんだと思って少しうれしかったけど その頃のやり場のない気持ちも思い出した。
玄関のすみっこに置いてあるのをみたらなんとなく 曖昧な関係の頃の自分とかぶって見えた。 色は褒めてもらったけど忘れられてすみっこに置いてある。 雨がふったときだけ引っ張り出されて。
見ていられなくて目をそらした。
私はもうそんな傘じゃない。
晴れた日だって一緒にいられる。
こころは、この雨が晴れても君と一緒に。
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