どうやら、そろそろ夏は終わりを告げるようだ。
照り付ける太陽の光に、夏の勢いは無い。それでも肌を射すような陽射しは、去り行く夏に惜別難く、悪あがきしているようにすら見える。 そして、道路で見かける蝉の死骸の数もめっきり少なくなった。 蝉爆弾。死んでるのかと思いきや、これこそ最後の力を振り絞り道路をはいずり回り、周囲を混乱に陥れることもない。
道路の真ん中に、蝉の死骸を見た。 今夏、一度蝉爆弾に巻き込まれ、見知らぬお姉さんと二人でプチパニックに陥った。だから、蝉の死骸を見つめながらも、距離を取って歩く。 そして私は思う。
ひと夏のほんのわずかな期間だけ生きることを許された蝉。 その与えられた期間、ずっと鳴き続けていた蝉。 そして、あるだけのものを出し尽くし、その生を終えた蝉。 だが、それがこの蝉に与えられた運命であり、この夏、鳴き声を通して、自らの存在を誇示するその姿は、何よりも輝いていたはずだ。
一瞬、頭を過ぎる何か。
逡巡し、それでも私は小さく呟いた。
「マ**キ、おつかれさま…」
どうやら、そろそろ夏は終わりを告げるようだ。
秋が、やってくる。
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