恐い話第二段 猫に関する切ないお話
 もうかれこれ20年以上前になるかな。まだ初々しい高校生だったオレ様が体験したかなり切ないお話を、お聞きください。
 学校帰りに仔猫を拾ったオレ。それは片手に乗るくらい小さい仔猫だった。まだまだ母親のおっぱいが必要なくらい小さな黒い仔猫だった。ちょうど胸の辺りに一箇所白いブチが一つ、その他は真っ黒。まだ産毛が生えていてポワポワしてた。名前は三太。真っ黒三太。何時も寝る時、オレの喉にダランと腹ばいになって寝てた可愛い三太。その三太がある日居突然姿を消した。もーオレ様気が狂わんばかりに捜す捜す捜す。そして迎えた二日目、ようやく発見した彼は、背中に膿がたまり、傷こそ無いもののノミだらけの悲惨な状態だった。どうやら近所の子供にどこかに閉じ込められたようだった。それからは外には出さないように母親に頼み大切に育てた。そして一月が経ち一回り多くなった三太、でもやっぱり寝る時は大好きなオレの喉の上、腹ばいで寝る癖は治らない。その頃はもう先にオレが三太をつまんで喉のポジションに置いてたけどね。
 そしてある日学校から戻ってみたら、また三太が姿を消していた。今回は何処を捜しても見つからない。毎日毎日捜したが今回ばかりは見つけてあげることが出来なかった。まだまだ諦め切れず朝、帰宅後、夜と捜すオレ。そんなある日、たぶん休日の昼間だろう、うたた寝をしていた時だった。階下から三太の鳴き声が・・・。
 ああ、帰ってきたんだ。もの凄く嬉しくて必死で名前を呼ぶが声が出ない。身体も動かない。変んだなぁと思っているうち階段を駆け上がる音と伴に部屋の襖が開く音が。そして、何時もの様にベッドに飛び乗った三太が喉の上にダランと腹ばいに。暖かい三太のお腹、懐かしい重みと感触。「三太お帰り、何処に行っちょったん?」と声をかけたいけど声が出ない、三太、三太「さんた・・」ようやく声が出た。とたん、喉の上にあった三太の気配が消え、オレは三太が死んだ事を悟った。
 泣きながら「今三太が帰ってきた」と母親に言ったところ、実はと母が話し始めた。三太が居なくなった日、実は犬に噛まれて死んでしまったっと。
三太は「もう捜さなくていいよ、僕は帰ってきたから。この世には居ないけどずっと側にいるから」とメッセージを伝えに来たのでしょうね。
 飼っていた犬のリキが、事故で噛んでしまったんですね。リキの名誉の為に少し説明すると、彼は気のいい優しい犬なんですがそのせいで何時も他の猫にからかわれてたんです。正面から威嚇しながらリキに近づいてそのまま又の下を走り抜けるとか、わざとリキのご飯に手を出すとか。その度にリキはパクッと噛む真似をしてたんです。たぶん三太もリキを見てびっくりしてシャーッって言ったのかもしれません。そして何時もの様にリキもパクッて噛んだんでしょうね。





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2002年11月05日(火)

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