青春の思ひで。

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2001年11月19日(月) 経験。

高1の夏に書いた読書感想文が県で入賞になりました。

いい本に巡り合って、久々に感動して、自分であのときの最高のものが書けたと、今でも誇りを持って言える。

今、読み返してもたぶんあまり恥ずかしくない(……と、思う)。

表彰式の席で、審査員に「君は文章は巧いけれど、テクニックだけで書いている節がある」と言われました。

……自分でも認めます。小手先の文章だと。あれは「感想文」というよりはどちらかと言うと「解説文」だ。文庫の最後に載せるのにぴったりだ。

でも、あれはあれで良いんです。あたしはあのときの感動をちゃんと焼き写したから(たとえ、それが自分にしかわからなくても)。


だけどね、あたしは「入賞」で。
「大賞」の方がいらっしゃったんですね。

高3の女の子でした。
名前も良く知られてない田舎の県立高校の。
(いやな書き方かも知れないけれど、あたしは母校出身であることにそれなりの誇りがあるのですよ)

確か彼女が読んだ本は有島武郎の「小さき者へ」でした。
彼女の感想文は新聞掲載されたので読みました。

彼女、母子家庭のようでした。
女手一つで自分と兄を育ててくれた母に感謝している。
はやく、自分が母に楽をさせてやりたい。

そんなことが「小さき者へ」と照らし合わせて書かれていました。

素晴らしい文章でした。

だけど。
だけど。

ずるいよ、って思いました。

あたしは両親共に健在で、仲も良く、溺れそうになるほどの愛情を受けて育ってきました。
健康体で、大きな挫折も味わうことなく。
せいぜい昔、いじめられたのがトラウマな程度で。


ずるいよ。

だって、どんなに技術があってもあたしには書けないもの。

あたしは片親の苦しみは知らない。
あたしは恵まれて幸福に育ってきた。
恵まれすぎて、幸福すぎて、不幸なくらいに。

彼女にあってあたしになかったもの。
それは「経験」

でも、どうしようもないじゃない。
彼女のような「経験」は持とうとして持てるものでなく。

経験のなさ。
どうにもできないよ。

ずるいよ。


……と、今でも思うけれど、ほんとうにどうしようもないから開き直るしかなく。

自分の経験の範囲内で、自分に書けるものを書いていくしかないのです。


天上旋律 |前略プロフィールゲストブック永久少女天然色夢絵巻kitchen & closetMAIL

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