青春の思ひで。
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2001年12月02日(日) |
WORLDS END |
最近は、昔のようにたくさん本を読まなくなったのだけど、その分、読む本の価値が高くなったと思う。 あくまでも「あたしの中の価値」で、その本や作家に対する世間的評価なんてあまり興味ないのだけれど。
「ミシン」 嶽本野ばら 著
嶽本野ばらを知ったのは約1年前。 田舎の地方新聞の文芸欄の片隅に彼はいた。 どんな記事だったか覚えてないのだけれど、あたしの愛する「MILK」や「Vivienne Westwood」について語る彼に、もうそれだけで魅せられた。 あのときも彼の本を探したのだけれど、見つけられなかった。
東京に来て、離れ離れになった友人からある日メールが来た。 「嶽本野ばらのミシンを読んだ。泣いた。絶対、君はこの人が好きだと思う。読め」
もうそのころにはあらゆる媒体に「嶽本野ばら」は出ていて、「乙女のカリスマ」だなんて呼ばれてたことは後から知ったけれど、彼は充分に有名作家だった。
あの日。 自分の浅はかさから入ってしまった迷宮から脱出できたあの日。 あまりにも空は晴れていて。 空気が澄んでいて。 気分がよくなったあたしは久しぶりに本屋へ入ったのでした。 映画化が話題になっているおかげでしっかりと置いてあった「ミシン」 あたしはやっと自分のものにした。
「世界の終わりという名の雑貨店」 ……読んでいてたまらなくなった。 「君」や「僕」があたしとダブって見えて仕方なかった。 彼らのようにノーブルでないのは明白だけれど。 あたしが求めているものが、そしておそらく手に入らないだろうものが、「世界の終わりという名の雑貨店」にはあった。
「どうして人は、本当に大切なことを喪失の後にしか気付けないのでしょう」
あたしは、まだ喪失していない。 今、本当に大切なことに気付けているかどうかはわからないけれど。 あたしは、まだ喪失していない。 「君」や「僕」と決定的に違う。だから、あたしはまだ、気付ける可能性を持っているのに。
あたしは泣かなかった。この物語で泣いた、という人はたくさんいる。 あたしは泣かなかった。 それはあたしが普段からあまり泣かないから、というわけじゃなく。 普段からよく泣くあたしは。 本や漫画をを読んでも割と泣きやすいあたしが。 泣かなかった。
けっして、「泣く」に値しない物語だったわけでなく。 「泣く」ことで、消化していい物語じゃなかったから。 「泣く」よりも、胸に突き刺さる何かに苦しんだ。
「ここは、世界の終わりではないのです」 物語は終わる。
「世界の終わり」なんて、きっと、何処にも在りはしない。
世界は続くから……、あたしは喪失の前に気付きたい。
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