酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2002年10月25日(金) 魔笛

 うーん、おもしろい。やはり私は野沢尚さんの物語は好きv
 物語は、照屋礼子と言う女性の手記の形をとっている。この照屋礼子、生来問題があり(この問題があるという言い回しが良いか悪いかわからないけど)、警察官になり、公安警察官となり、メシア神道という新興宗教へ潜伏し、逆に洗脳され稀代のテロリストとなり果ててしまう・・・。そのテロリストとしての孤独な戦いの好敵手となるのが、刑事鳴尾、そして獄中のその妻、籐子。鳴尾と籐子の奇妙な関係も物語のポイントであるし、この籐子という女性がプロファイルするところも面白い。公安は、木乃伊取りが木乃伊になってしまった照屋礼子の抹殺を願う。それを阻止しようとする鳴尾。このクライマックスは頭にバーンっとシーンが浮かんできた。鳥肌もんのシーン。
 照屋礼子という大量殺人犯の目線で描かれることが、最初は読みづらく、途中から馴染むと一気に引っ張っていく。今の北朝鮮問題を鑑み、人間というものはその状況で変わってしまう(誤解を恐れず言うならば洗脳されてしまう)。おもしろいのだけど、身に迫る怖さを感じた。

『魔笛』 2002.9.20. 野沢尚 講談社



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