酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2002年11月10日(日) 小さき者へ

 岡山が誇る直木賞作家、重松清さんの短編集。いつもながら、完璧な救いはそこにないけれど、もうちょっとだけ頑張ろう、そんな気にさせてくれるそんな6つのお話。
「海まで」
 田舎に住む年老いた母親と自分の息子の関係がいつからかねじれてしまう。不器用で心優しい少年はおばあさんの意地悪に傷つきながら、でも優しい。最後に膝が痛いおばあさんの膝をさすってあげる少年がとても好き。

「フイッチのイッチ」
 小学校4年生の圭祐の両親は小さな頃離婚した。トモは両親が離婚して転校してくる。小さいながら必死で大人の事情を理解しようとするふたりの子供。こどもには大人の事情なんてわからないよね・・・。

「小さき者へ」
 家庭内暴力をふるい始めた14歳の息子につづる父親の手紙。自分の14歳を思い出し、現実に息子にもう一度立ち向かおうとする再生の物語。

「団旗はためく下に」
 応援団長だった父親の押忍(オス)。高校を辞めて人生をはじめようとする娘がその押忍の心を学び取っていく。

「青あざのトナカイ」
 会社を辞め、ピザ屋をはじめ失敗。その失敗から男が傷を癒し、立ち直ろうとするまで。この男がどん底でひとりになりたいと家族を奥さんの実家に行かせてしまう。どん底になった時、人間はひとりになりたいものだから、わかりすぎて心が痛かった。

「三月行進曲」 
 息子が欲しかった男が、少年野球の監督になる。問題を抱えた少年三人を連れて甲子園まで遠出。男の人ってロマンチストなんだなぁと思います。

 さすがに重松さん。丁寧に心の襞を描いています。HappyEndではないけれど、きっとまた明日は頑張れる。そんな人間を描いてくださる重松さんが大好きです。



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