酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2006年07月30日(日) 『少年陰陽師 風音編』 結城光流

 「なんたってお前は、半人前でいまいち頼りなくてまだまだ修行中だけど、一応多分きっと立派になるであろう、端くれだけど陰陽師」・・・と、まぁ(笑)いつものことながら昌浩は物の怪もっくんに慰められているようでおちょくられていた。昌浩は三つ年上の陰陽生・敏次にネチネチいじめられていた。深夜に暗躍する昌浩の事情も知らず、爺様の七光りで上層部に可愛がられているとしか見えない昌浩を妬んでいるらしい。昌浩は以前は優しくしてもらっていただけに傷ついているのだった。昌浩の加冠役(後見人)が出世頭の藤原行成であることも妬みを増幅させていた。その行成が怨霊に襲われ、瀕死となる。その背後にいたのは・・・!?(「禍つ鎖を解き放て」)
 貴船の竜神が遊びに来たため深夜に相手をする物の怪もっくん。以前、窮奇に貴船を乗っ取られていた竜神は、封印を解いてくれた昌浩を気に入ったらしい。しかし、遊びに来て眠っている昌浩に完全憑依するため、物の怪もっくんは昌浩の身体が心配で仕方ない。近々またなにか起こりそうだという不穏な言葉を残して去って行く竜神。そしてその予言どおり都に百鬼夜行が近づいてきて、またもや深夜の暗躍に励む昌浩は切々とした悲しい声を耳にする・・・(「六花に抱かれ眠れ」)
 晴明に怨みを持つらしい謎の女術師・風音は、背後に蠢く者のために黄泉に冥穴をいくつも穿っていた。皇子が生まれたため、寂しい想いを必死で我慢する幼い皇女・脩子の心を利用し、現世に瘴穴を穿つ呪法を使っているのだ。人の心を操る風音は、昌浩にとって一番信用する存在を使い卑劣な攻撃をしかけてきた・・・(「黄泉に誘う風を追え」)
 物の怪もっくんの本性・紅蓮(騰蛇)の魂は、縛魂の術にからめとられてしまった。十二神将の中で最強の通力を有する騰蛇が異形に変貌すればかつてないほど恐ろしくおぞましい化け物となってしまう。かつてその力ゆえに晴明の命を危険に晒し、他の十二神将から遠巻きにされていた騰蛇。失いたくない存在を抹殺すべきか否かを迫られ、昌浩が下した決断とは・・・!?(焔の刃を研ぎ澄ませ」)

 窮奇編のラスト(「鏡の檻をつき破れ」)で大泣きに泣かされた昌浩と物の怪もっくんと彰子たちの物語。今回は、晴明を怨みに想う謎の術師しかも超美女・風音が登場し、物の怪もっくんこと騰蛇以外の十二神将たちも続々と登場します。そして哀しみと後悔を背負った騰蛇はまたもや過ちを犯してしまい・・・と言うハラハラドキドキしかもメソメソな展開。希代の陰陽師・安倍晴明が後継者と指名した孫・昌浩は、少年ながら半人前ながら愛と勇気と美しい心で周りのもの全てを巻き込んで困難に立ち向かう凛々しさを持っています。昌浩が苦しめば苦しむほどに彼の心も力も研ぎ澄まされて行く・・・。今回、昌浩がなによりも信頼する存在・物の怪もっくんとの別れを目の前にして彼が下した決断の凄まじさは晴明を貴船の竜神をもすら驚かせてしまうほどのものでした。いやぁ、前回とは違う涙・涙にくれました。なんと言う素晴らしい物語なのでしょう。私はもうメロメロに腑抜けにされております。超オススメv

「もっくん人間と違うだろう! 一応仮にも名前だけかもしれないけど多分神様なんだから、人間ごときに遅れをとるなよなぁ!」
「その『一応仮にも名前だけかもしれないけど多分』というのに『陰陽師』とつなげてそっくりそのままお前に返す!」
「なにおぅっ!」
「文句があるか、晴明の孫っ!」
「孫言うな、物の怪の分際でっ!」
「俺は物の怪じゃなーいっ!」


『少年陰陽師 禍つ鎖を解き放て』  結城光流 角川ビーンズ文庫
『少年陰陽師 六花に抱かれて眠れ』 結城光流 角川ビーンズ文庫
『少年陰陽師 黄泉に誘う風を追え』 結城光流 角川ビーンズ文庫
『少年陰陽師 焔の刃を研ぎ澄ませ』 結城光流 角川ビーンズ文庫



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