酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2006年08月22日(火) 『闇』 栗本薫

 清乃は父親から性的虐待を受け、その場を目撃した母親は娘に嫉妬した。その後、父は蒸発し、母は癌で死んでしまい、清乃は3才年下の弟・貞文と残されてしまう。貞文は、父親が姉を犯しているところを見て逆上した母親が包丁を持って暴れまわった修羅場を見てから心のバランスを欠き、引きこもりとなってしまっている。27才になった清乃は、自分の過去を題材にした小説で賞を受賞。アルバイト先の上司と不倫関係にあった清乃だったが、イケメンの担当編集に恋心を抱く。そんな清乃に嫌がらせの無言電話がかかりはじめ、貞文には悪意が滴る葉書が届き始めた。ふたりきりの姉弟に忍び寄る悪意と恐怖・・・その正体は!?

 こういう陰湿でドロドロした物語を描かせたら栗本親分はうまいですね。惚れ惚れするほどのグロサにございました。清乃は、幼い頃から父親に性的虐待に遭い、それを知った母は助けるではなく娘を憎む。身勝手な親が消えて壊れた姉と弟の元にまた違う闇が迫ってくる・・・と言う、なんともやるせない無限ループ。ふたりを閉じ込めた家の持つ闇と人間が持つ心の闇、そのふたつの闇が融合して清乃をがっぷり掴んで離さない・・・。清乃自身も無意識のうちに自ら囚われてしまったのかもしれないなぁ。清乃も貞文も逃げ出せていたら、過去から逃れられたかもしれないのに。なんだかトッテモかわいそうでした。ラストの落とし方も想像はつくものの、現代らしい括り方でなかなか面白かったです。これでもかと落ちて行く清乃。運命から逃れられなかったんだねぇ。ううううう。

『闇』 2006.7.18. 栗本薫 ハルキ・ホラー文庫



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