酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2006年10月10日(火) |
『東京ダモイ』 鏑木蓮 |
1947年11月、極寒凍土のシベリアで捕虜となった日本兵たちは互いに疑心暗鬼になっていく。そんな状況で斬首事件が発生。しかし、凶器も犯人もわからなかった。その後、帰還した男が60年経ち自費出版で句集を出そうとした。シベリアでの過酷な生を感じさせる生々しい文章を残し、彼は失踪。出版社の槙野はその文章に惹かれ、失踪事件と殺人事件を追いかけ、そして・・・!
『東京ダモイ』、そのタイトルに郷愁を感じましたが意味は知りませんでした。ダモイとはロシア語で帰還という意味だそうです。捕虜となった日本兵たちが東京ダモイを信じて必死になって生き抜いた・・・そういう時代を知らずにいるのだなぁと平和ボケな自分にちょっと疑問を感じました。知らずにいればそれはそれでいいのでしょうケレドモ、知ってしまい魂をゆさゆさ揺さぶられてしまった以上はキチンと知識として頭に入れたいなと思います。決して忘れてはいけないことがあるとしたら、二度と起こしてはいけない戦争なのでしょうね・・・。物語がどうこうと言うよりも、自費出版されようとした句集に描かれたシベリアラーゲリの話をもっと読みたいと思いましたもの。そこが一番の魅力でした。
もう過去のことだと忘れてしまっていいのか。今後ますます戦争体験者の数は減少していく。情報を受け継ぐことが人類を進歩させてきたのではないか。それを考えれば、広島、長崎の原子爆弾に匹敵する大惨事、シベリア抑留者の強制労働を風化させていいのか。シベリア、満州を合わせて三十万人の死者を出したと記述されたものを図書館で読んだ。にもかかわらず、どれほどの人がそれを知っているのだろうか。話題のミステリーベストセラーを読む人々の何割が、ダモイという言葉の意味を理解できるのだろうか。
『東京ダモイ』 2006.8.10. 鏑木蓮 講談社
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