酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2006年10月09日(月) 『彼女の命日』 新津きよみ

 楠木葉子、2002年10月1日通り魔に遭遇し死亡。35歳の葉子は父亡き後、母と引きこもりの妹のために家計を支え家族を守っていた。やっと恋人に求婚され、甘えられる存在ができた矢先のことだった。そして1年後、葉子は何故だかこの世に戻ってきた。誰だか知らない女の身体を借りて。そして2年後、3年後、4年後と葉子は誰かの身体を借りてこの世に蘇りつづけるのだが・・・。

 人は誰しもいつか死にます。早かろうが遅かろうが命が尽きる定め。その限りある時をどれだけ後悔なく生きられるか・・・。ただ漫然と生きていると後悔は多いでしょうね。この物語の主人公・葉子は頑張り屋さんでやっと自分の幸せを手に出来ると思った矢先の無念の死。その無念さゆえに、命日に蘇り続けるのかもしれません。ただ蘇ったところで生者は死者のことばかり考えてはくれない。その現実を見て余計にやるせない想いをするなんて・・・死ぬならば静かに朽ち果ててしまうがいいのに。死して尚、かなしい事実を知ってしまうなんて私はいやだなぁ。なんだかトテモ悲しくせつない物語でありました。葉子がんばりすぎ。

 自分がいなければどうにもならない、何もかもストップしてしまう、なんて思っていても、案外何とかなるもんだよ。 〜中略〜 ときには開き直りというか大らかさがないと、ストレスがたまってやってられないんじゃないの?

『彼女の命日』 2006.9.8. 新津きよみ 角川春樹事務所



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