酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2006年10月08日(日) 『毒』 深谷忠記

 柳麻衣子は看護士として初めて感じる患者への嫌悪感に悩まされていた。その患者は横暴で卑猥、家族にも看護士にもドクターにも嫌われていた。その患者が毒殺された。麻衣子が結婚を考えているドクターが犯人と疑われてしまったのだが・・・?

 この物語は病院が舞台となるため、タイトルの『』は文字通り毒を表し、そしてまた人間の持つ毒をあわせもっています。宮部みゆきさんの『名もなき毒』の毒と相通じるものがあったように感じました。毒を撒き散らして平気でいる人間の神経というのはそれはそれは恐ろしいものだと思います。人間は誰しも身体のどこか毒を持っていて、きっとそれを必死で押さえ込んでいるものではないのでしょうか。あふれでた毒、確信犯であれ無意識であれ毒は毒。かならず汚染します。だからなにかのきっかけで自分の毒を見つめて封じ込めなければならない。そんなふうに思うのです。人間は清濁併せ持ち、決して綺麗な生き物ではない。自分は絶対に間違っていないなんて思わぬように、そんなことを自戒しながら。

 仕事ができようと、社会的に認められようと関係ない。他人を傷つけ、他人を苦しめて平気でいられる者、それでいて罪の意識をまったく感じない者、それこそ最低の人間だろう。

『毒』 2006.8.31. 深谷忠記 徳間書店



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